【仔犬】(11/18UP)
「きゃあ、可愛い〜」

午前の訓練が終わり、いつもならそのまま更衣室へ向かうところを、小春日和の陽気に、遠回り
をしながら庁舎へ戻る。
特殊部隊で女性隊員は郁一人だから、そんな遠回りに付き添う仲間も無く、一人気ままに歩く。

ふと、目の前の草むらで、何かが動く気配。

  まさか、大きなネズミってことないよねぇ・・ 恐る恐る近寄ってみる。

さっきまでカサカサと動いていたのに、郁が近づいて辺りを見渡してもそこには何も見えない。

  アレ?風が騒いでいただけ?
  オカシイなぁ・・

しゃがんで前方の草むらを掻き分けてみる。

  ・・やっぱり、ネズミか何かだったのかな?

まあいいや と立ち上がると不意に足元にサワッと触るモノがあった。
ひゃあー と思って足元を恐る恐る見ると――
小さなシッポを振り振りしている小型犬の「チワワ」だ。

「可愛い〜。でも、何でこんなとこに?」

辺りを見渡しても飼い主らしき人影も誰も居ない。
利用者が連れて来たのか?近所の犬が紛れ込んだのか?
本来なら気性の荒いチワワだが、この子はやけに人懐こくって、抱き上げた郁をペロペロ舐めている。

「とにかく保護ってことよね」


        ・
        ・

隊員と離れて一人あらぬ方向へ向かって歩き出す郁に気がついた堂上は頭を傾げる。
何かあったのか?
小牧に言うと、また「過保護だね」とでも言われそうだな と思いながらも、自然と後を追ってしまう。

遠巻きで眺めてみる。
すると、急に駈け出したかと思ったらしゃがみ込んで何か探しているようだ。
もし後ろを振り返られた時の事も考えて、隠れるように様子を窺う。

  俺はいったい何をしているんだ・・

自分のやっている事がストーカーのようでバカバカしくなってくる。
立ち去ろうかと思った時、郁が急に振り返った。辺りをキョロキョロ見回しているようだ。
瞬時にしゃがみ込んで植木に身を隠す。 

  ばれなかったろうか?

植木からソロリと郁を窺って見る。
どうやら仔犬を抱いているようだ。

  何でここで犬?

しばらくそのまま様子をみていると、郁は仔犬と遊びだしている。
郁が走ると後をチョコチョコと付いて走る犬。
それを待ち構えて抱き上げると頬ずりして、ヨシヨシと頭を撫でる。

  ―― なんだかな・・どこかで見たような構図だな・・

知らず知らず、堂上の眉間に皺が寄っていた。




あはは!
堂上教官は、きっと郁ちゃんと仔犬に、自分と郁をダブらせてしまったのだねー
自分の後をキャンキャンと付いてくる郁。
そして、頭をポンポンとしてクシャっと撫でる自分(^v^)


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