涙の後に・・
その日の郁は最悪だった。
堂上班としては初めての図書館業務に就いたその日。
どこに何の本があるのか やればやるほど 頭がまっ白になっていく・・
段々泣きたくなるのをこらえ 皆に迷惑を掛けているのもよく分かるから 必至にリクエストのあがって
きた本を探すのだが・・・
同期なのに 全てを把握している手塚。
いちいち聞くものだからその手を止めてしまって 上官二人にその分かなりの負担を掛けている。
お昼になって少し手が空いた頃 皆からのダメ出しがきた。
手塚からの言われようは もういい訳も許してくれないほどだった。
自分が情けない。
涙が頬を伝う・・ しかし 自分の責任だ。
手塚はちゃんとやっているのだ。 自分がいかに甘えていたのか痛感した。
そんな時 柴崎が他館リクエストの伝票を持ってやって来た。
そして昼に連れ出してもらって ホッとした。
「ありがと・・柴崎。すっごくみっともなくて辛かったよー」
抱きついて ボロボロ涙が出るのを止める事ができなかった。
聞けば 堂上教官から頼まれたのだという。
「もう!相変わらずあの人ったら あんたに甘いんだから」
「えっ・・」
「伝票持って来るくるついでに昼に連れ出してくれって言われてね。あんた手塚に散々やられて半泣き
だったって?」
堂上教官 ちゃんと見ててくれてるんだ。
頑張らなきゃ・・
王子様の前に 教官にちゃんと追いつかなきゃ・・
こんなの みっともなさ過ぎる・・
ちゃんと認めてもらえるように 頑張らないと・・
「あーん 柴崎〜 あんた いいやつだよー」
「ちょっと 笠原。苦しいってば!お礼は 教官に言いなよ」
うん、うん。分かってる・・
私 いつも皆に助けられて 支えられてるって 本当に実感した。
いつも助けられているから 今回もそれに甘えていた自分が居た。
恥ずかしい・・
これじゃあ 教官に追いつくどころか 見放されちゃう。
ずっと あの背中を追って行きたいのに。
堂上教官に見放されたら・・ 辛い。
えっ!? 辛い!?
郁は自分の気持ちに動揺していた。
いつも何かあると そこには頼りになる堂上が居た。
見守ってくれると思うと それ以上の力がでるのも 気のせいでは無いと思う。
この気持ちは何だろう・・
ねえ 柴崎・・
「柴崎〜 あたし教官にありがとうって言った方がいいのかな」
涙が止まらない郁は まるで子供のように柴崎に泣きついている。
「バカね。しっかりしなさいよ。あらたまってお礼言われたって聞かないわよ きっと」
「う・・うん」
「そんなことより お昼の時間無くなっちゃうわよ。何食べよっか」
「・・柴崎!あたしに図書館業務教えて!」
もう 皆の足を引っ張りたくない・・
「そうくると思った。今晩からしごくわよー。覚悟なさい」
ホッホッホッと 笑う柴崎はちょっと不気味だが これで大丈夫だと思う。
うん。きっと。
わたし頑張るからね 堂上教官!!
心の中で 誓う。
堂上教官に 認めてもらいたい。
そんな必至になっている郁が あまりにも分かり易くて なんだか愛おしい。
なんて可愛いのよ あんたって。
柴崎は大事な友人を見て 堂上教官の事を ちょっと羨ましいかな・・と思った。
ちょっとだけね。
fin