ないしょ

柴崎が出勤していったあと一人残った郁は ベッドの上にゴロンと寝転んで 天上を見上げる。
今日は 堂上班は公休日だ。
一人になると 余計な事をまた考えてしまう。

昨日の業務終了前 日報を書いていて ふと目線の先を見ると 堂上と小牧がなにやら深刻そうな話を
しているようだった。

・・あれは 何を話していたんだろ?

郁が首をかしげて そちらを伺うと 小牧が気付いて なんでもないよと言いながら 手を振った。
今思えば すごくあからさまだったような気もするんだけどな・・・
考え過ぎかとも思うけど・・

帰って来てから柴崎に相談を持ちかけたら あっさり
「エッチな相談でもしてたんじゃないの?」
しれっとそんな事を言う友人に 真赤になりながら
「柴崎!!あんた な・何言ってんの!絶対何か怪しいんだってば!」
「気になるなら 聞けばよかったじゃない。あんたらしくもない」
そ・それもそうなんだけどさ。
うーん 気になってしかたない。話してるのはいいんだよ。
それがさー 私に聞かれちゃマズイみたいなね・・ そんな雰囲気だった・・
考え過ぎなのかな・・

柴崎の言うように エッチな話も 私みたいに女が居たら コソコソしちゃうのかな・・
そう言えば特殊部隊は今まで男ばっかりだったんだもんね。
って ちゃうちゃう!!そうじゃないってば!!
やっぱ 違うよ。

もんもん考え込むのは 性分じゃないよね。
何か飲むかな・・ ふぅーっとタメ息をついて 立ち上がり 共有スペースでもあるロビーへと向う。
今日の気分は フルーツミックスかな と自販機のボタンを押す。
取り出し口に出てきた缶に手を伸ばしたとき いつもの聞きなれた声がした。

「堂上教官。小牧教官。」
その声に こちらに気が付き ちょっとバツの悪そうな顔をしているふたり。
やっぱり何かヘンよね。
「こんな朝早くから 二人でお出掛けなんですか?どこ行くんですか!」
つい 詰問調に聞いてしまう。
そこへ 
「すいません 遅くなって・・」
と 手塚までやって来た。
何がどうなった?という手塚と なんでこうなるのか・・と しかめっ面のふたりの教官。

「ぜーったい!!絶対オカシイですよ!!昨日から何なんですか!!」
「お前には関係ない」
堂上は聞く耳持たずだ。
「手塚 行くぞ早く来い!」
手塚を急き立てて そそくさと 3人連れ立って出かけて行った。
益々おかしい・・ 絶対ヘンだ。 どう見ても 怪しい。
あたしだけ 仲間ハズレだ・・ ふいに涙が落ちる。
ヤダ あたし何で泣いてるの・・


その日の郁は最悪の1日だった。
考えれば考えるほど 涙が出てくる。

夕方になって堂上たちは帰って来た。
なにやら大きな荷物を持って。

堂上は朝の 郁のあの顔が どうも心に引っ掛かってしまって 1日落ち着かなかった。
アイツ絶対 勘違いしている。
早くその勘違いを解消してあげたい一心で携帯を鳴らす。

寮の自室で ベッドに寝転び天上を見ていた郁は 鳴り出した携帯に「堂上篤」と出ているのを見て気
持ちが揺らぐ。
「・・はい。」
それだけ言うのがやっとだった。

弱々しげな郁の声を聞いて 胸が痛む思いの堂上。
「おまえ・・・泣いてるのか?」
「・・・大丈夫です」
「だったら直ぐに ロビーに来い!これは教官命令だ」
「命令なんですか・・はい。分かりました」
こんな 腫れぼったい顔で 教官に会いたくない・・そう思ってたのに。

そのやり取りを小牧と手塚に伝えると小牧は
「やっちゃったかな。笠原さん大丈夫かな。ちょと失敗だったね」
バツが悪そうだ。
手塚はどうしていいのか分からないと言った感じで 無言でたたずむ。

少しして 郁がロビーに現われる。
どう見ても 1日中泣きはらしたような顔をしている。
堂上は そんな郁を見て 固まってしまう。心が痛い・・

堂上がどうにもならないと察知した小牧が郁に こっちへ来るように手招きをする。
「笠原さん 今日は悪かったね。決して仲間ハズレにしたわけじゃないんだよ。それは分かってね」
「いいえ」
普段の あの郁では全然ない その様子を見て アホな手塚は
「おまえ調子狂うなぁ」と ついつい言ってしまう。ハッとして 口に手をやるが後の祭りだ。
郁は キッと 手塚を睨む。

小牧が堂上をつついて おいっ!と催促する。
ああ 分かっているんだ。
「笠原。今日は悪かったな」
と言って 堂上は郁の頭をクシャッと撫でる。
「悪かったって・・やっぱり何か隠し事してたんですね!」
再び 涙腺がおかしくなってくる。
「バカ!泣くやつがあるか!」
えーい めんどくさいなぁ・・と堂上は呟き 
「なんだな 明日はお前の誕生日だろうが!」
郁とは関係ないほうを見ながら ぶっきらぼうに吐き捨てる。

えっ???
忘れてた!あたし。

「笠原さんにナイショで悪かったんだけど 明日 堂上班でお祝いしてあげようと思ってね」
「だからだな いろいろ準備がだな・・」
ホントにもう 隠し事の出来ない人達なんだから・・
郁は泣きながら ふきだしてしまう。
「折角の公休 どうしてくれるんですかぁ!台無しですよ!」
笑いながら 段々腹が立ってきた。

「ちょっと早いけど 今日これからお祝いすることにしようか。何だか明日まで待たせるのは可哀想だ
から。お詫びも兼ねてね」
小牧の提案に 一同 そうだね という事になった。
「じゃあ 1時間後にまたロビーに集合だな」

「悪かった」
別れ際に 堂上は郁の頭をくしゃっと撫でて あとでな と付け加えた。
にっこりと笑って去っていく堂上の背中に 
「お詫び たんまりとしてもらいますからね!」
つっかかり口調になりながら 叫び 撫でてもらった頭に手をやりながら まんざらでもないといった
郁だった。

                                                   fin

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