好きな気持ち

郁の「王子様卒業宣言」から 堂上の気持ちにも少し変化があった。

頑ななまでに 自分の気持ちに蓋をすると決めていた。
そして それが出来ないで居る自分に 苛立っていた。
そんな時だった。 わざわざ俺に報告する事でもないのに・・
「教官、あたしが王子様の話するのが一番イヤみたいだったので。安心してもらえるかなって」

自分で使えないと思っている過去の自分を美化されて 少しは成長した今の自分は全否定された。
だれでもない 郁にだ。 確かに なんだか比べられているようで苛立ってしまっていた。
それを・・・ 何で今・・
あいつは 俺のことをどんなふうに思っているんだろう。

噛み付くように突っかかりながらも
・・相談するべきないようだったら堂上教官に真っ先に相談します!

そんな郁の言葉のひとつひとつが 堂上の気持ちを和らげていく。
俺も 素直になってみようか・・
今の自分を理解してもらえればいいんだ。俺を見て欲しい。今の俺を・・

以前小牧に 言われた事あったな。
「とりあえず直属の上官として?王子様に人徳で勝って 部下の心を掴まないと」
あの時は 何を言ってやがると 気にも留めなかったが 今ならそう思える。
俺は 上官としてアイツを守る。そして 一人の男として。

俺は 笠原郁のことが好きだ。愛している。

自分の気持ちにウソを付くのは もう止めだ。
少なからずとも 俺の勝手な勘だが アイツは俺を頼りにしてくれている。そう思う。
その気持ちを俺に向けてくれたら・・



そんな時 郁がカミツレの話をしてきた。
昇任試験で 堂上が筆記を鬼監督のごとくみてくれたお陰で合格できた。 そのお礼だそうだ。
カモミールのアロマオイル。
香りをかぐと とても好きな匂いだ。
郁も この香りが好きだという。
香りをかいで 気持ちが楽になったのかもしれない。
「今度どっかこれを飲めるお店に連れてってくれないか。できれば直接咲いているところも見たい」
すらりと 言葉が出た。
ちょっと 唐突だったかなと思い 直ぐに、
「胸にカミツレつけてるだけで本物を知らなかったからな」
と付け加える。

笠原は 俺のことをどう思っているのか分からない。
でも 俺は自分の気持ちにウソは付かずに 真っ直ぐにアイツに向かい合う。
 
そして いずれその時が来たら「好きだ」と俺から告げる。
アイツの答えは 分からない。
でも こうやって自然に時が経てばいいと・・そんなふうに堂上は思った。

                                                 fin

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