悪夢の先に・・

う〜ん・・・
悪夢にうなされて 堂上は飛び起きた。
汗をビッショリかいているのが分かる。

何だか 頭が重い。痛みが走る。つっ・・ ココはどこだ? 今 勤務中じゃなかったか?

「大丈夫?災難だったね」
ふと 横を向くと 小牧が顔を覗き込んでいる。
「ココは?」
「医務室だよ」
「俺 どうしたんだ?」
まだ ワケが分からないといった堂上に 
「あれ?覚えてない?笠原さんの私信取り上げようとして 投げられたじゃない。軽い脳震盪起こして
倒れたんだよ」
小牧は心配しているといったより クックッと笑いながら 答える。 

な・・そう言えばそうだったかと 数時間前を思い出す。
「1時間ほどで起きてくるって話だったのに なかなか目を覚まさないから どうしたのかなーって見に
来たのさ」
小牧は 大丈夫?と笑顔をみせる。

そうなのか?今何時だ?
医務室の時計を見ると すでに夕方だ。

「起きれる?」
「ああ」
「何だか うなされてたけど ヘンな夢でも見た?」

・・・よく覚えていないが とても不安になるような 嫌な夢だった気がする。
手を伸ばしても その手の先にあるものが すぐそこに届きそうなのに届かなくて とても遠くに感じた
ような・・
必至で追いかけていた・・そんな夢。 

「いや・・大した夢じゃない」
強がってみせるが 今の堂上は かなり弱々しく小牧に映った。
こういう時にも 素直じゃないね・・ 頑なな友人に 小牧はため息をつく。


「笠原は?」
ハッと気が付き どうしているのか気になった。
「笠原さん かなり落ち込んでたよ。まだ目を覚まさないって そりゃもう。でも 今かなり混乱している
から 会っても気にすること無いからね」
一応 さらりと釘をさす。
ん?と思ったが まあこんな事の後だからな そうか・・と 納得する。


事務所に戻ると 手塚が心配そうに寄ってくる。
「堂上ニ正 もう大丈夫なんですか」
「ああ 心配掛けたな。悪かった」
まだ ちょっと頭が痛いがな・・ と言って笑ってみせる。
「笠原 お前 堂上ニ正に何かいう事あるんだろ」
手塚が催促する。
チラッと郁の方を見ると 俯いて やけに神妙だ。

堂上は とっさに手を上げて
「いや 今回の事は 俺が悪い。笠原は謝る事は無いから 気にするな」
「しかし 堂上ニ正・・」
「俺がいいと言っているんだ。この件は終わりだ」
納得がいかないといった手塚に 追求を許さない。

「もうこんな時間だし 堂上 今日はもう上がってもいいぞ。あとは俺がやっとく」
小牧に言われ 寮に戻る事にし すまんな と事務所を出ようと・・ドアを開けた時 
「堂上教官 あたし・・」
座っていた郁が 何か言おうと立ち上がったのが分かったが
「もういいと言ってるんだ。笠原 お前のせいじゃない 気にするな」
郁の方を見ずにそう言い残し バタンとドアを閉めた。

今 郁に何か言われたら あの悪夢と重なりそうで とてつもない不安が胸をよぎった。
それが何でだか分からない。ただ そう思った。


寮の自室に戻って部屋着に着替えた堂上は ベッドに横になり天上を見つめる。

この不安は いったいなんなんだろう。
郁が手塚慧に 私信で何かを言われたのは確かだ。
俺に見られたくないほどの事を書いてきたに違いないのも こんな状況になったのをみれば明らかだ。

俺に見られたくないほどの事・・?
考えても 考えても分からない。
手塚慧 いったい何を考えているのか・・

あの夢は・・ 
追っても追っても届かないのは 郁なのか。
直ぐソコに居るのに 俺が手を伸ばすと するりと居なくなる・・・
俺の手には つかむ事すら出来ないのか・・・

嫌な夢を見たもんんだな 


・・郁

心の中で その名前を何度も呼んでみる。
返って来ることの無い返事。
それでも 堂上は 何度も何度も 名前を呼んでいた。
悪夢を振り払うかのように・・・

こんな事の後だからな。
悪い事ばかり考えそうだ・・
そうだな まずは明日は 笑顔でアイツに挨拶することにしよう。

                                     fin

top