あんたって本当に・・・
「ねえ あんた 堂上教官に抱きついて泣いたって?」
女子寮の自室で 同室の柴崎が帰るなり 聞いたわよ〜 と郁をつつく。
「もっぱらの噂よ。業務部じゃ 大騒ぎな子も居てね」
ほんとに・・つくづく疲れたといった身振り手振りで
「あんたと同室なもんだから 私なんて色々聞かれて やれやれだったのよ・・」
「抱きついてないっ!」
そうだっけ?
「じゃあ 抱きつかれたんだっけ?」
しゃあしゃあと 柴崎に言われ
「それも 違うっ!」
郁の顔は 蒸気が出んばかりに真っ赤。
この子ったら 本当に構うとおもしろいんだから。
「で?」
「で?って・・ な、何よー。そんなんじゃないんだから!」
そう言いながら
でも 傍から見たらそう見えたのかな・・どう見えてるだなんて あの時考える余裕なかったもの・・
郁は 今更ながら 顔が赤くなる。
もう!また堂上教官に迷惑掛けちゃった・・
教官もきっと 何か言われちゃってるんだよね・・
急にシュンとしおらしくなった友人に いつもと違うじゃない!?と柴崎は思う。
段々 堂上に対する笠原の気持ちの持ちようが変わってきているのかしらね。
これは 更にウォッチングのしがいがあるってもんよね。
でも・・
いつの日か 大好きな彼の元へ行ってしまう時がくるんだろうな。
私をひとり残して・・
それって ちょっと寂しくない!?
今のうちに いっぱい構っておいてあげなくっちゃね!!
目の前で 赤くなったり青ざめてみたり 一人騒いでいる その大好きな友人を見ながら
「もう!なんであんたって そんなに可愛いのよ!」
と 柴崎はギュッと郁に抱きついた。
な・・何?どうしたの?
ビックリしている郁に
「だからー。こんな風に 抱きついたのかって聞いてんのよ」
と 郁を困らせてみたくて 笑ってみせる。
「しーばーさーきー!」
ホント あんた構ってると飽きないわ。
いつまでも そうやって私の周りで賑やかに騒いでいてね。お願いよ。
堂上教官には悪いけど まだまだ笠原は 渡せないわね。
私の大切な たった一人の親友。
取ったら覚悟しなさいよ。
幸せにしてやらなきゃ 許さないんだから。
でも・・当分楽しめそうね。
だって お互いにまったく分かっちゃいないんだもの。
周りには 丸分かりなのにね。
目の前で繰り広げられている 笠原劇場に目を細めながら 次はどうやって構ってやろうかしら。
にっこり笑いながら 笠原 大好きよ と呟いてみた。
fin