仕事の後に・・

業務が終了したあと いつになく早く日報を書き終えた郁は 堂上に提出するとそそくさと帰って行った。
「最近 笠原さん 日報書くのが早くなったよね」
小牧が 感心していると
「早いのはいいんだが・・ 内容がよく分からん。ただ埋めているだけだな これは」
明日朝一で説教だな と堂上はタメ息をつく。
「どれどれ・・」
日報を覗き込んだ小牧は それを見て プハァーと噴出す始末。
「な、なにこれ。字もでかいよ。ホントに埋めただけだね・・」
「何をそんなに急いでるんだか。ここのところ ずっとだぞ。見るか?」
と 数日分の日報も 小牧に見せる。
ちょっと・・、俺を笑い地獄に陥れる気か・・ と 小牧は最大の上戸で苦しそうだ。



そんな 事務室でのやり取りを 全く知らない郁は 急いで着替え閲覧室へと向っていた。
いろんな雑誌も揃っている図書館は まったくもって なんて都合のいい場所なんだろう。
しかも 自分がそこに勤めているだなんて。
使わない手は無いよね。

最近の郁は 占いに凝っている。
恋愛のその手の占いを 片っ端から読みあさっていた。
恋に奥手の自分を どうしたらアピール出来るのか・・ 少しは気付いてもらえたら・・
恥ずかしい事は 出来ないから 願掛けとか そんなのも試してみたい。

まずは 相性。
本によって 全然違ってるから どれを信じていいのかと 更に迷う。
でも あらかた平均を取ってみると どうやら相性はいいみたい・・ と 思いたい。

ひとり ブツブツ言いながら読み進め これは!と思うことは メモしておく。
傍から見たら 何て一生懸命お勉強でもしているのかと思われるほど。

連日の事なので 柴崎が知らないはずもない。
「あんた 一生懸命なにやってるのよ」
と 隣に座り まあ おりこうさんね・・ と言って笑う。
「し、しばさき!」
ビックリして大きな声を張り上げると シーッと人差し指を立てられる。

「そんなまどろっこしいこと止めて 告白しちゃえばいいじゃない」
柴崎は しれーっとそんなことを言う。
「そんなの無理無理無理!絶対無理!」
郁は真赤になって 首を横に振る。
「なーんで。やってみなきゃ分からないじゃないの」
と 柴崎。
だって・・・
「もし その場で玉砕ってことになったら もう一緒にいられないもの・・とても言えないよ・・」
机に突っ伏して 今にも本当に砕けそうだ。
「ばかねぇ」
この愛おしい友人は 本当に堂上教官の事が好きなのね。
そして 堂上教官も。

傍目からすると もう既に付き合ってるんじゃないのって思えるほどなのにね。
どうして 当の本人たちは それが分からないのかしら。
たまに見つめ合っている時なんて 誰も間に入れないっていうのに。
ホント 面倒な二人だこと。
まあ ウオッチングしがいがあっていいんだけど。

「柴崎。今はまだ このままでいいの。まだ 教官の傍に居たいから」
その目は真剣で 茶化すのも可愛そうね と
「せいぜい 頑張んなさい」
ポンと 郁の肩を叩いて 柴崎は じゃ まだやることあるから と戻っていった。

柴崎が去ったあと 雑誌に目を落とすが 活字が頭に入ってこない。
告白・・ 呟いてみて 頭をブンブン振る。
できっこないよ。絶対無理無理無理・・
でも・・ もし告白したら 勝算はどれくらいなんだろうか。
ううん。考えただけでも ありえない。ありえないとしか思えない。
こんな戦闘職種で教官より背も高くて いっつも怒鳴られてばかりで・・胸も小さくて・・
良いとこ 一つも無いのに・・

はあぁー 広げた雑誌の上に突っ伏し タメ息しか出てこない。

ふと 好きとか嫌いとか そんなんじゃなくて 私のことを どう思っているのかな。
そんな疑問が湧いてきた。
でも それも頭の中で打ち消す。
きっと堂上教官の事だ。 部下として・・としか 言わない気がする。
一人の女の人として 私を見ているとは どうしても思えない。

はあー 
やっぱり タメ息しか出てこない 郁だった。




翌朝 
「おはようございま〜す」
元気良く事務室に入ると 堂上に こっちへ来いと 手招きされた。
怪訝に思って言われるままに 堂上の机の脇に行くと
「お前の日報だけどな」
と言われ 数日分の日報をその場に出された。
郁としてみれば 気になることも無いので どうしたもんかと 首をひねる。

そんな郁の表情をみて堂上は
「おまえなぁ・・」
と 言いかけたが やっぱりいい と 言うと
「席へ戻っていいぞ」と言い変えた。
「何ですか それ!」
今度は郁が食い下がる。
「もういいと 言ってるだろうが。言う気もなえたから もういい!」
「言ってもらわなきゃ分からないじゃないですか!」
「お前に言っても 無駄だと分かったからいい!」

あーあ また始まった。
周りは いつもの事だと 気にも留めなくなっていて 誰も仲裁にも入らない。
と言うか 二人の世界だから入れない と言ったほうがいい。
皆がもう そう思っている。

堂上が怒鳴って 郁が噛み付いて その内泣き出して・・
そして最後に堂上が慰める。

ほら 今日もまた 同じ事の繰り返し。

「悪かった。俺が言いすぎた」
「いいえ。私が悪いんです」
そして いつものように頭に手をやって グシャっと撫でて・・
「これからは気をつけろよ」

今日も いつもの1日の始まり。

でも今日はちょっと続きがあった。

「笠原。いつも早く上がって 何やってんだ?」
何気なく 疑問をなげかけてみると 急にかぁーっと郁の顔が赤くなって・・
それに直ぐに気がついた堂上が 一人うろたえる。
ど・・どうしたんだ!? 俺 何かヘンな事言ったか!?
たった今 泣かせたばかりだから 堂上も慎重になる。

「そ、それは・・言えません!」
ガタッと席を立つと ちょっと喉渇いたから・・ と事務室を出て行った。

残された堂上は いたって居心地が悪い。
「俺が何した!?」
独り言のように つぶやく。

皆が息をのんで見守っていると 堂上も席を立って 事務室を出て行った。
今日は もう第二戦が始まったか。

今日も平和な図書特殊部隊。。。

   
                                         fin 

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