カレンダー通りの休日があるわけではない仕事に就いていると 今日がいったい何曜日なんだろうと
考える事もない。
ただただ 次の公休は 何しようかなーとか せいぜいそんなところだ。
いつ何時 召集が掛かるかもしれないから よっぽどじゃなきゃ 外出しようとさえ考えないようになっ
ていた。

同室の柴崎とも 業務が違うので 公休も滅多に一緒になることもない。
それが
「あら?次の公休 休みが一緒じゃない」
と柴崎が郁のシフト表を見ながら 郁に ホラっと見せる。

へえー 珍しいね と頷くと
「空けときなさい。たまには 買い物付き合いなさいよ」
と誘われた。
そう言えば 柴崎と一緒に買い物なんて いつ以来だろう。
「帰りに あそこのケーキも食べようよ」
目を輝かせながら 行く行く! と言うと あんたっていつも食べ物ばっかりね と笑われた。



柴崎には ちょっと思うところがあった。
最近(恋する乙女のせいか)かなり可愛くなってきたと 郁のことを皆が言っている。
玄田隊長も 事有る毎に 郁を餌にもしていた。
それなりの 格好をすれば どこのモデルかと見まごうほどのスタイルである。
なんと言っても いつもジーンズで隠している その脚は見事といっていいほどなのに。
柴崎からすれば この上なく もったいない のだ。

郁のワードローブを見ると これは本当に年頃の娘の!?と思うほど。
そこで 私がこの子をそれなりにしてあげましょう と 密かに意気込んでいるのだった。

もし 万が一 デートのお誘いでもあったら この子ったらどうするんだろうね。
ホント 心配よね・・
無い 無い って言うけど こればっかりは 分からないじゃないの。
実際 事件の餌になりに行く時ですら それなりの服装を持ち合わせていないのだ。

それと同時に この煮え切らない二人の関係を少しでも進展させることが出来たら・・
大好きな友人と 大好きな上司の事を思いやる。

私が見立てた郁の私服姿を見て その気にならないようじゃ 男じゃないわ。
柴崎は すでに臨戦態勢である。
覚悟なさい。フッフッフッ・・



柴崎と出かける約束をした公休の前日のこと。

ここのところ 検閲もなく 抗争もなく 穏やかな日が続いている。
堂上班で 久々外で食事でもするか と話していると 俺も混ぜてくれと 玄田も参加で話がまとまっ
た。
たまたま 玄田も公休が一緒になっていたのだ。

そうとは知らず 訓練が終わり 戦闘服を着替えに行っていた郁が 事務室に戻って来た。
「笠原。明日11時半に玄関前に集合だ」
堂上に言われる。
「ちょっ、待って下さい。何かあるんですか?公休ですよ 明日は!」
明日は公休のはずなのに・・ 何か仕事を押し付けられるのだろうか・・
怪訝そうに堂上を見ると アホか 貴様! と 頭をポカっと叩かれる。
「だからだな・・」
と 先ほど決まった事を郁に伝える。

「すいませんっ!柴崎と約束があるんです。笠原抜きで お願いします」
折角 堂上教官と(他の人もいるけど・・)お出掛けできるのに・・ ちょっと残念。
そんな気持ちが顔に出ていたのか
「そんなに残念がるな。柴崎のが先客だろ。久々だろうから 楽しんで来い」
と言われてしまう。 うわぁー 何それ・・ あたしってバレバレ!? 
顔が赤くなるのが 自分でも分かるので 俯いてしまう。

「笠原さんも残念だろうけど こっちも残念なんだよ。な、堂上」
小牧が そんな事を言うもんだから さらに頭が混乱する。
教官も残念がってくれるの!? と チラッと堂上を見る。
「小牧 何バカ言ってんだ!」
堂上は 無表情でそう言う。
「俺も残念だよ。手塚も 隊長もね」
小牧は笑顔で付け加えた。

日報に明日の予定も書いて 堂上に提出する。
さっきの会話が思い出され 何となく声が掛けれない。
堂上はどう思っているのか やっぱり無言で 日報を受け取る。
「あ、あの・・」
と 言いかけると
「ああ お疲れさん」
と言われてしまい
「はい。お疲れ様でした」
それだけ言って 事務室を後にした。

郁が帰った後の 閉まったばかりのドアを見ながら 堂上はタメ息をつく。
小牧の野郎!余計な事を言うから 変な感じになっちゃうじゃないか。
ちくしょう・・ 

そして 郁の提出した日報の明日の予定の場所に目が行った。
もし ばったり出会いでもしたら・・
そんな事を考えてしまった自分に動揺し 頭を抱える。
俺 本当に残念がっている・・ それだけは自覚した。



当日。
郁はいつものラフなジーンズ姿の少年のような格好で 柴崎に あんたねぇ・・ とタメ息をつかれて
いた。
それじゃ まるであたしの彼氏みたいじゃないの・・ 

そう言われても 数少ない手持ちのスカートをはく気分ではなかった。
「いいの!これで!」
半ば投げやりにそう言うと ほら 行くよ! と 先にロビーまで下りていく。

柴崎の買い物に付き合うのに おしゃれしたってしょうがないじゃん。
そう思いながら 椅子に座って柴崎を待つ。
教官達は11時半集合って言ってたから 会うこともないな・・

そうか・・ 考えてみれば仕事だと顔見れるけど 公休は会えない日なんだよね。
急に乙女モードになる。
教官 今 どうしてるかなー。
昨日は あんな形で 帰って来ちゃったけど・・ どう思われちゃったのかな・・

少し遅れてロビーにやって来た柴崎は あら 面白い光景ね! クスッと笑いがこみ上げる。
表情やら 動きやら 挙句に言葉まで ダダ洩れだ。
本当に堂上教官のことが好きなのね。
益々 今日の企画に よーし! と力が入る。
あたしに任せておきなさい。 見違えるほどいい女にしてあげるわ。
狙いは誰でもない。堂上教官ただ一人よ。

さーて 行きましょうか。

↑top
→next

おでかけの時には

前篇