自分で飛び込んだ世界とは言え 過酷な毎日ではあるかな・・と思う。
良化隊の襲撃は それは銃撃戦もあるから大変だけれど 普段の訓練は 女といえども容赦は無い。
郁自信も 特別扱いされるのは嫌いなので そんな図書隊は居心地がどうと言われれば 悪くは無い。
・・そうなんだけど・・。

でも 何か事が起きると今まではその場から外される事が多いのも事実だった。
堂上に問いただしても 答えはいつも同じだから・・
そこだけが 納得いかない!絶対いかない!

他のタスクホースの面々と比べても 何らひけをとらないはず。
いや事によってはかなりの評価を受ける事もあるのに。 

小牧は
「堂上のワガママだからね。過保護すぎなんだよ」
と言っている。
そんな 過保護 要らないですから・・
いざという時に 本を守れなかったら 何の為に図書隊の それも防衛部を希望したのか意味が無くなっ
ちゃう。

それに・・
堂上教官に追いつきたいのに!これじゃ追いつくどころか 遠くて届かないよ。
何も出来ない足手まといみたいな私じゃ 全然ダメ・・
もっと教官の役に立ちたいのに・・

もっと私の事 分かって欲しいのに・・
邪魔にしないで欲しいのに・・



そんな 鬱憤が 悶々と溜まってきていたある日のこと。

些細な事で 同室の柴崎と口論になった。
悪いのは自分・・。分かってる。
でも 誰かにぶつけなきゃ 居たたまれない。

いつもは冷静な柴崎もそれが分かっているからか 今回だけはいつになく 郁の気持ちを逆なでてくる。

言わせるだけ言わせた方がいいのかもね・・ 吐き出したら落ち着くかな・・
そんな親心?みたいな。

言いたいだけ言って わあわあ泣いて 落ち着いた頃を見計らって
「もう済んだ?これだけ言ったんだから上等でしょ?」
柴崎は郁を覗き込む。
「ごめん・・嫌な思いさせて・・」
泣きすぎて まだヒックとしゃくりながら 笑ってみせる。
「バカねぇ。ヘンな顔して笑わないの!」

「あんたさ、堂上教官が悪いみたいなこと いっぱい言ってたけど ホントはそんな事思ってないんでしょ。」
そこを衝かれると それはそうなんだけど・・
「でもね・・ もっともっと傍で役に立ちたいって思っているのに 教官はいざという時 必ず外すんだよ。私
が邪魔みたいに・・」

それが本音ね。
5歳年上の男の機微を分かれってのも 無理なのかしらね。この友人には。
まあ それ以上にあの教官はかなりの過保護よね。

「それ 堂上教官にちゃんと言ったことあるの?ぶつかってみたら 違ってくるかもじゃない」
「うん・・。でも柴崎に言ったら ちょっと楽になったよ。ごめんね」
郁がしおらしく謝りをいれると
「あたしは別にいいのよ。ちょっとあんたにギャーギャー言われて傷ついた分 外ランチ1回デザート付きで
大丈夫だから」
と 笑ってみせる。

柴崎って なんてー奴。
でも そんなところが 落ち着くんだよね。ありがとう。
心の中で お礼を言う。



翌日 柴崎は堂上を呼び出す。
「ちょっと 笠原の事で・・」
携帯越しにそう言われると 少し顔色を変え慌てて事務室を飛び出していた。

指定された場所へ行くと 柴崎はとっておきの笑顔で出迎える。
こういう笑顔に男どもはやられるんだろうが まあ絵になる女だからな そう思いながら近づく。
「すいません。お忙しい時に。でも 飛んできちゃうとは思いませんでした」
さらに ニッコリと微笑む。
それには 無表情でやり過ごし
「で 何だ?笠原がどうした?最近おかしいからな それのことだろう」
と 問いかける。
「あら おかしいと 気付いてたんですね。だったら話は早いわ」


「公休の日にでも 笠原をどこかに連れてってあげてくれません?」

・・・! それはいったい・・・

柴崎の思ってもみない話に 堂上は頭がついていかない。
「それは どういう事だ?」
怪訝そうな顔で 訳が分からないと言った口ぶりで 問い質す。
「何だかいろいろあるんですよ 笠原自信。まあ 訳は聞かずに1日ゆっくり遊ばせてやってくれませんかー
 って思っていただければ」
まだ どうにも釈然としない堂上は
「そういうのは お前の役目だろうが。次の休みにでも一緒に出かけて遊んでくればいいだろう」
と 声も苦々しい。
「女心ってヤツですよ。私じゃダメな事もあるんです」
「だったら 手塚にでも頼むんだな。同期の方がいいだろう。こんなおっさんと一緒じゃ笠原も楽しめないと
思うがな」

柴崎が何を考えているのか 皆目見当がつかない。
俺が笠原と遊びに出掛けるだと!? どこでどうなると そういう事になるんだ!?
しかし内心 悪い気はしない。
そんな事が出来る時が来るのか・・と。
だが・・・

「もう。煮え切らない男は嫌われちゃいますよ!教官!」
「き、嫌われるって 誰にだ!?」
ヘンにうろたえて 柴崎の笑いをかう。
「笠原の様子がおかしいことと 遊びに連れ出すって事が どうも繋がらない。しかも何で俺なんだ?」
「それはもちろん上官だからでしょ」
堂上の頭の中には 疑問符がどんどん増えていくばかりだ。

「ちょうど イベントのチケットが2枚あるんですけど。これなんて 丁度いいと思うんですよね」
柴崎はポケットからチケットを取り出すと おもむろに手渡した。
堂上は受け取るつもりも無かったが 不意に出されて つい手にしてしまう。
『おもちゃ博物館』と書かれたそれは 次の堂上班の公休日の日にショーがあるらしい。

「そして 最後にこれだけは言ってあげて欲しいんですけど」
そう言いながら ニッコリ微笑んで
「タスクフォースにとって 笠原は大事な存在だ って」
「な、何を突然・・」
「それ 教官の口から聞いたら あの子すごく喜ぶと思うんですけどね。じゃ よろしく〜」

頼みましたからね! と 柴崎は再度念を押して 手を振って去って行った。
飛び切りの笑顔も忘れずに。



なんだって 俺が・・・
チケットを手にしながら 呟く。

事務室のドアを開けるやいなや 慌てて飛んでいった堂上を心配してか 手塚が
「堂上ニ正 大丈夫ですか!」
と近寄ってくる。
「ああ 何でもない。大丈夫だ」
憮然とした態度で ドカッと椅子に座る。
その横で見ていた小牧が
「何でもないって顔じゃないけど・・ 俺にも言えないこと?」
と 小声で聞いてきた。
「笠原さんのこと?」
さらに聞いてくる小牧に 驚きを隠せない。
「別に何でもないと言ったら 何でもない!」

だからさー それがどう見ても何かありそうなんだよ

小牧はクックッと笑うと 
「相談にのるよ」
と言った。



その日の晩 つまみと飲み物持参で 小牧は堂上の部屋へ来ていた。
柴崎から提案された事を説明しながら どうしたもんかと思う。
小牧は聞きながら さすが柴崎さんだねー と何だか感心しているかのようだ。
小牧のその様子を見て さらに堂上は怪訝な顔になる。
「俺じゃなくて お前誘ってやってくれないか。お前も笠原の上官だろう」
「堂上。それは無理だよ。お前じゃなきゃダメだよ」
「なんで 俺なんだ・・」
小牧は 困ったなーと呟きながら
「班長は堂上だろ?」
そう言われると ぐーの音も出ない。

そもそも お前が過保護すぎるからだと思うよ。
もっと笠原さんの事 信用してあげたら?
彼女 今かなり 不安になっているんだと思う。
そんな笠原さんを慰めようと 堂上が誘った ってのが大事なんじゃない?

相変わらず小牧の言う事は正論だと思う。
そんな事 分かっている・・

しかし これって どう見てもデートじゃないか!?




堂上班の公休明け。
すっかり機嫌の直った郁が 今日も楽しそうに張り切っていた。
堂上は いつものように無表情でそれを見ている。


ホントに見ていて飽きない二人よね。
でも こっちから段取りつけてやらなきゃ サッパリなんだから 世話が焼けるわ。

今回は 笠原を泣かせた罰よ。
でも お仕置き 利き過ぎちゃったかしら・・堂上教官!

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彼女を笑顔にするには