独身寮の恒例イベントで カレーパーティが開かれる事になった。
毎年入寮1〜2年の新人が今宵の出し物を決める。
今年はカレーパーティにしようということになったらしい。

郁や柴崎は 今年で3年目。
やっとその役割から解放され 今年は先輩面していられるから 気が楽だ。

堂上班は全員独身寮に入寮しているので 朝から何かにつけてその話になる。
と 言っても ほとんど郁一人で盛り上がっているのだけれど。


午後から館内警備のローテーションが入っていた。
小牧と手塚、堂上と郁のペアに別れ 館内の見回りに出る。

「教官。楽しみですね〜。今日のイベント。カレーパーティですよねー」
午前中はそれでもまだ浮かれた気持ちも抑えていられたが・・。
今年は用意する側で無いから 何があるんだろうと 楽しみでしょうがない。

「笠原。浮かれすぎて要注意利用者を見逃すとかするんじゃないぞ」
堂上にジロリと睨まれ ひゃっと肩をすぼめる。
そんなに浮かれてるかナァ 押さえているんだけど・・
そう呟きながら 堂上を伺うと またジロリと睨まれる。
「はい。気をつけてますから」
やばい、やばい。


こいつは どうしてこうも 思っている事がダダ漏れなんだか・・
怖い顔を作って睨みを利かせてみるが 内心可笑しくてしょうが無い。
子供みたいだな。 
そんなにイベントが楽しみなのか 幸せな奴だ。
しかし今は職務中だ。
締める所は締めておかなくてはいけないので 少々キツメに注意する。

暫らく巡回していると どうしてもその話をしたいのか
「教官は 楽しみじゃないんですか?」
と郁は切り出した。
「お前ほどじゃない」
堂上は そう答える。
「やっぱり おじさんには興味湧かないのかなー」
と 何気に呟くと 拳骨が飛ぶ。
「誰がおじさんだ」
あれ 聞こえてました・・ と頭を抱えると お前の言う言葉は全部ダダ漏れだ と言われる。

「そんなに楽しみか?」
逆に聞かれ 
「だって話によると 何が入っているか分からないカレーだって言うじゃないですか」
わくわくした風にしゃべる郁に ホントにおまえ子供と一緒だな と言って笑うと
ムッとしたのか 少し口を尖らせて 
「教官知らないんですかぁ。みんな言ってましたよ」
そして続けて
「なんでも部屋を暗くして 自分で皿に盛るんですって。で、盛った物は絶対食べなきゃいけないとか・・」
やはり わくわくしたそれが伝わってくる。

もしや・・と堂上は思い当たった。
「笠原 みんなって・・おまえそれ 誰から聞いた?」
「事務所で先輩達が言ってました」
と にこにこして話す。

・・またからかわれてるな。
しかし何でまあ こんな容易くひっかかるんだ こいつは。
先輩達も それが分かって言ってるから性質が悪い。
どうせ笠原の事だ それで?って 話に乗ったんだろうが・・

「他に 何聞いた?」
と 話を振ると
「なんでも 食べ残すと罰ゲームもあるらしいですよ。何するんでしょうね」
とか
「でも 食べられない物は入って無いからって それは安心していいらしいです」
とか
「一応 胃腸薬は用意した方がいいみたいですけど 辛さはどうなんですかね」
とか・・
堂上にしたら 真にもってどうでもいいような事が どうやら楽しいらしいのが分かった。

聞いていてそんなに危険でも無さそうだな と思ったので 特別他に言う事も無い。
これ以上話させると仕事にならないので
「楽しみは後にとっとけ」
語気を強めに ジロリと睨むと はいっ と郁はまた肩をすぼめた。
そして もう一言 今度は優しめの口調で
「あまり期待しすぎると 後でショックが大きいから そこそこにしとけ」
と付け加える。
 

そして お待ちかねのイベント。
余興ありの和やかな会は 何事も無く進み、
メインのカレーパーティはごく普通のお食事会のまま 楽しく時が流れた。

堂上は小牧と 明日の業務も笠原の愚痴で 仕事にならないなと 顔を見合わせる。
被害者は手塚にしとくか 
明日のペアはこの時点で決まった。

                                              fin.

カレーパーティ

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