あの当麻事件が無かったら 今の俺達はどうなっていたのかと思う。

今思い返しても 大変な事件だったし 俺はあれで生死を彷徨う羽目にもなった。
色々な意味で 俺達の節目になった事件。

まさかあの時 郁から告白されるとは思いもしなかったが。

そもそもそれ以前に 俺の腹はもうくくられていた。
茨城県展警備の時に 最後まで俺と同じ景色見る と言ったあいつの一言で迷いは吹き飛んだ。
何度かデートに誘って 頃を見計らって・・
俺にとって 茨城から帰ってからのカモミールティーを飲みに出かけたのは デートのつもりだった。
そんな事を何度か重ねていけば・・

いや 俺のことだから 言葉で言うのは無しだったかもしれない。
あいつの気持ちは俺に向いていると 茨城県展の時に 確信した。
だからそうやって いつの間にか付き合っているといった形に持ち込んでいけばと・・
そう思わないことも無かったかもしれない。

なんにしても あの事件で 二人の気持ちが一つになった。
痛い目はしたが 俺の好きな作家も守れたし 感謝してもいいのかもな。


それに 郁から告白させたのは 今から思えば良かったと思う。
俺からだったらなぁ・・ 

郁は 本当に真っ直ぐな奴だから まずい時にその事を持ち出すと助かる事が多々ある。
いつまで続くかわからないが。

しかし 惚れたのは 俺のほうが先だと自覚はある。
あいつが王子様云々に うつつをぬかしている頃から 俺は郁が好きだったからな。


こんな事を考えてしまうのも あいつがまだ現われないせいだ。
また今日も 俺に会う為に少しでもおしゃれしようとして 出掛けるのが遅くなっているんだろう。
そして時間が無くなって 走ってくるんだ。
走ってこなくていいと言っても 息をきらせて走ってくる。

同じ寮なんだから だったら一緒に出掛けてもいいのに
「その方がデートって感じがして いいから」
って笑うあいつが また可愛くて 郁の思うようにしてやろうと思ってしまう。

まあ 俺もこうやって待っているのは 苦でもないし。
寮の玄関で待つよりはいいからな。
いろんな奴と顔を合わせる寮の玄関よりは。


明日は公休だから 今日は外泊も出してきている。
付き合いだして かれこれ一年になるから外泊もスムーズになった気がする。
ホントに ここまでくるには 経験の無い郁だったから いろいろあった。

俺にしてみれば 付き合うまでにかなりの年月を要し さらに待つことになったんだからな。
俺って こんなに忍耐強い奴だっんだと 自分で驚いたが。
解禁になってからは もう我慢は無用だから 我慢は止めた。

どれだけ待たされたと思ってるんだ。
もう待たない・・ いや 待てない。
待ち合わせで こうやって待つのとは意味が違うから。

小牧とそんな話になって おまえがっつき過ぎだよ と笑われた。
小牧に言われると 何だか悪い事をしているような気さえしてくるから困るが。
あいつは それこそ 俺以上に待たされていたんだからな。

気持ちは分かるが 俺は対象者が毎日 目の前に居るんだ。
職務中は 仕事と割り切って理性で押さえるところは押さえている。
しかしだ。
俺の愛しい女が 俺に微笑みかけてきたら そりゃどうにかなりそうなのも分かりそうなもんだろう。
誰もそこに居なかったら 俺は確実に 毎日数回は郁の唇に触れているとさえ思う。
だから なお更待てない。
二人っきりになったら 郁を思い切り愛したい。いや 愛し合いたい。


仕事中じゃ 手も繋げやしないしな。
早く 郁に触れたい。
 
なんだか 俺 スケベなオヤジみたいだな・・ と苦笑いする。

今日はいつになく 遅いな・・と思って時計を見るが 5分過ぎた程度だ。
ヘンな妄想し過ぎて 時間の感覚もおかしくなったかと さらに苦笑いになる。

そろそろ 郁が走ってやってくる頃だ。
そしていつもの笑顔で俺に謝るんだろう。
その笑顔に 俺はまた一撃されてしまうんだろうな。
惚れた弱みだ しょうがないか。

                                             fin

待ち時間に・・

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