『・・来月の14日から一週間 読書週間です。ご自分の「記憶に残るこの一冊」があったら 広報担当
○○まで・・』

先日配られた隊内の広報誌に そんな事が書かれていた。
流石に図書館に勤めているだけに みんなそれぞれお勧めの一冊と言うのがあるようだ。
毎月発行される隊内向けの その広報誌のコーナーは毎回好評だった。

お勧めでなくても この本を読んでこう感じた とか この本のここに感動した とか
そんな投稿も 図書館員ならではの賑やかな誌面になっている。

それが今回 読書週間ということで 利用者に「記憶に残るこの一冊」というタイトルで館内に提示する
企画らしい。
隊内だけであれば 多少砕けた感じもあるが 利用者へとなると また違った意味も含んでおり
迂闊なことは言えない。


「投稿するんだったら 良く考えてからにしろ」
郁が ウキウキとその広報誌を眺めていたら 堂上が牽制してきた。
「まだ何も言ってないじゃないですかぁ」
と 口を尖らせて抗議する。
「お前の考えてることなど 百も承知だ」
何だか バカにされた気になってムッとする。いつもいつも どうしてそういう事言うかなー!

「じゃあ 今何を考えてるか当ててみて下さいっ!」
と 睨んでみせる。
「どうでもいいような事は無駄だから考えんでいい!」
呆れた顔でそう言われるとなおさら面白くない。
「あー なんですか それ!失礼なんですけど!」
郁はそう言って脹れると
じゃあ いいもんね。夜に呼び出しメール来たって 行ってなんてやらないから!
と 心の中であっかんべーをする。

「バッ・・!」
堂上は バカ と言いかけて 顔を片手で覆い 舌打ちをする。
ぶわっはっは・・ その様子を上戸が入って肩を震わせていた小牧が 堪えきれなくなって噴出した。
「いや・・笠原さん もうダメ・・あはは」
「・・はい!?」
「夜の呼び出しー」
と手塚が指摘しかけると キャアー とそれ以上言わせないとばかりの大声で叫ぶ。
そこで堂上の拳骨が落ちる。
「バカか貴様!全部ダダ漏れだ!」
真赤になって堂上を見ると 堂上もこころなしか赤くなっている。
うわっ!


「で 何を投稿する気だったの?」
上戸が入りながら 小牧が聞いてくる。
「もういい。それ以上 喋らせるな!」
これ以上何かろくでもないことでも言いそうだと思った堂上は トゲのある声をはさむ。
「堂上 いいじゃない。なんだか笠原さん楽しそうだったからさ。この一冊ってのがあるのかなーと」
「はい・・あるっていえばあるんですけど・・」
そう言いながら 郁は堂上をチラッと見る。
堂上はさっきからずっと 郁を睨んだままだ。ひゃ!こりゃやばいかな・・ そう思ったが
「その本は子供の頃から大好きな本で・・」
言いかけて もう一度堂上をチラッと見る。

チラチラと自分をみる郁に 堂上はさらに怪訝そうな表情になる。
なんで 俺をそんなに気にする?

「それで!?」
二人の目で会話してそうな雰囲気がたまらないねー と言いながら 小牧が先を急かす。
堂上は 不機嫌な顔のまま郁を見ている。
郁は 困った顔になって
「やっぱ いいです」
と 小さな声で呟く。

「ほら 堂上があんまり威嚇しているから 笠原さん怯えてるでしょ」
と 小牧は可笑しくてしょうがないようだ。なかなか上戸が治まらない。

お前のその態度の方が勘に障るんだがな 堂上は小牧を睨むが 小牧は全く堪えるはずもない。
「笠原 いいぞ 言ってみろ。俺は別に怒ってないから」
と 小牧に押される形で つい言ってしまった。
子供の頃から大好きな本って言ってたから まさか自分に話しが及ぶとも思わずに・・

堂上に 言ってもいい と言われたがやっぱり躊躇してしまい またチラッと堂上を見る。
早く言え! と逆に怒鳴られ 勢いでまくし立ててしまった内容は・・

「その大好きな童話の完結本が10年ぶりで出版される事になって とっても嬉しかったんです。
絶対欲しかったその本が 検閲の対象になってたけど どうしても欲しくて本屋さんに学校の帰りに
行ったんです」
聞きながら 堂上の顔が急に険しくなる。
もう一度 チラッと堂上の様子を伺って 郁はひゃーっと息を呑んだ。
これ以上言うと ヤバイ!?

「で!?どうしたの!?」
小牧もきっと もう察しがついたのだろう。
最後まで言わせようと 更に先を急かそうとしてくる。

「そこで堂上教官と出会ったんですっ!今から思えば、もうこれ絶対運命としか思えないですからっ
!」

手塚は自分の事でもないのに 赤くなって俯いている。
こいつ ここまで言うか・・堂上ニ正の心中察するナァ・・

「そっか。そこでその本と堂上と出会った訳だ。そりゃその本は重要だよね」
にこにこしながら小牧が 堂上に話を振る。
「まさに「記憶に残るこの一冊」だよね、堂上・・ あ、王子様だっけ!?」
この友人は こともあろうに 何でこの場で王子様とか・・
堂上は真赤になりながら
「小牧!その辺で止めとけ。いい加減にしろよ!」
と凄んでみせるが この友人はそんな事じゃびくともしない。

逆に 続き聞きたいなー と郁にせがんでいる。
た、頼むから その辺で止めてくれ・・ もう知っている事だろ!? としおれると
手塚は 素なのか 天然なのか
「自分はあまり知りません」
と 言うので 小牧のいいように話しが進み その後は暴露大会の様になってしまったのだった。

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忘れられない一冊