武蔵野図書館では 年に一度の図書の日に 子供達を楽しませる催し物の一つに劇の披露というの
があった。
選抜チームが子供向けの童話とか昔話を 読み聞かせ・紙芝居 ならぬ 劇にして披露するのだ。
例年だとくじ引きでチームが決まるのだが まだ一度もやっていないという事で 今年は堂上班中心
に話が回ってきていたのだった。

「聞いてないですよ」
手塚は必至だ。
「読み聞かせもやっとなのに 子供相手ですか!自分には荷が重すぎです」
「もう決まっちゃったからね。今更他の班ってワケにもいかないんだよ」
小牧がなだめている。
「出来たら 自分の出番は少なく願います」

「うーん・・どうかなあ。脚本家がどうするかだよね」
「えっ?脚本家!?どなたですか」
「そりゃーねぇ・・ 誰って言われてもさー」

・・・・・

小牧が手塚に 何やらこしょこしょと耳打ちしている。


気を取り直して 聞かなかったことに・・
「まあとりあえず 出し物だよね」
苦笑いしながら小牧がフォローしてくれる。
手塚は真っ青になりながら 肩を落とし
「出し物も 諦めました・・ 俺 何でもやります。雑用でも大道具でも・・」

そんな手塚に小牧は更にフォローを入れてくれる。
解説付きで 何気にありがたいです。小牧教官!!

「まあ そんなに 落ち込むなって」
「はあ・・」
「ここは どう見積もったって 堂郁中心サイトだろ」
「・・のようですね」
「王子様とお姫様は決まりだから 俺達は脇役決まりだろ」
「ああ!なるほど!!」
「たまに 気まぐれで 主役が変わるかもしれないらしいが・・ 今のところはな」
「はい・・えっ?たまに気まぐれ有ですか?」
「それは 俺には何とも言えないよ」
「・・・」


その時 事務室に堂上が戻ってくる。
渋い顔をしている。
小牧と手塚は 顔を見合わせてから 小牧が
「どうした?」
と聞いてくる。

「心して聞いてくれ」
息を呑む二人。

「劇とキャストが決まった」
「何になった?」
渋い顔が益々渋くなり
「今年は『赤頭巾ちゃんのパロディー』だそうだ。内容がかなり違うらしい」
「何ですか・・それは!!」
「俺に聞かれても困る」

「で・・誰がどの役なんですか?」
手塚はそれが気がかりでしょうがない。
堂上は口で言う代わりに キャストの書かれている紙を見せた。


      <赤頭巾ちゃん>

       キャスト
         ・赤頭巾ちゃん      笠原
         ・オオカミ          玄田
         ・お母さん         柴崎
         ・お兄さん         小牧
         ・猟師(実は王子様)   堂上
         ・森で出会う動物     手塚


はあ??すいませんが 動物ですか・・俺
手塚は紙を見て 唖然としている。
「あ、それ 今のところ 案 だそうだから 気にするな」
今度は堂上がフォローをする。

「お婆さんが居ないんだね」
と小牧が不審そうに言うと 堂上は
「ああ。それか。どうやら お婆さんの代わりに お兄さん らしいぞ」
「はあ!?何それ!じゃあ 俺 食べられちゃうのか」
と言って プハァーっと笑っている。
「内容も かなり違っているらしいから そんなもんじゃないのか」
「へぇー 面白そうだね」

「笠原たちはどうしてるんですか。これ 知ってるんですか?」
手塚は面白く無さそうに まだブツブツ言っている。
「笠原と柴崎は 既に台本もらって練習だーって 張り切ってたぞ」
そう言う堂上は楽しそうだ。
郁の事となると 事情が変わるらしい。

堂上二世は笠原には甘いからな・・
手塚は仕方ないかな・・と思おうとした。
まあ 俺もそんなにセリフ無さそうだし 動物でも役的に 悪くないかとタメ息をつく。

台本か・・。
そう思って我に返る。
「俺 その日休みにできませんか。やっぱり 俺には荷が重すぎます」

「大丈夫だよ。手塚に王子様役はまわってこないから」
小牧は クックッと笑う。
「お、王子様役なんて あるんですか!これ 赤頭巾ですよね!」
サーっと顔が青くなって手塚はうろたえる。
「括弧書き見てみてよ。まあ仮にそういう役があっても 堂上がいるからさ」
小牧にそう言われて堂上を見ると 

「うるさい!」
と ひとこと。

不機嫌が更に不機嫌を着たような仏頂面で 誰がそんな役やるもんか と吐き捨てる。
ああ 堂上ニ正も大変なんだな ご愁傷様です。



そこへ ドタドタと廊下を走ってくる音がする。
事務所に入るなり 
「廊下は走るなと言ってるだろうが!」
と 堂上に怒鳴られる。
「だいたい お前はだな・・」
今日もまた恒例のお説教が始まったようだ。
すいません と謝っているのは笠原だ。

その途中で
「あの・・ 教官。練習です!お芝居の!隊長に皆集まれって言われて呼びに来たんです」
いたってにこやかに 笠原が話し出す。
グッ・・ 説教の腰を折られ まだ何やら言いたそうな堂上だったが言葉に詰ったようだ。
やっぱり 堂上も劇は苦手なんだろう。

このまま説教が続けば 劇の練習時間が無くなるんじゃないかと 少しは期待した手塚だったが 
思いも空しく 引きずられるように連れて行かれた。

さーて どんなお芝居に仕上がるのだろう。
即席の劇団は上手くいくのかなー

武蔵野劇団発足

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