寮の自室でいつものようにビールのプルタブを開け くつろぎの時間へと入る。
戦闘訓練で汚れて疲れた身体を風呂で洗い流し 風呂上りの一杯は最高に旨くホッとする。
ビールを煽りながら 持ち帰った写真を思い出し立ち上がった。
確か制服のポケットにしまった筈だ。
数日前に特殊部隊の飲み会があった。
いつもは宴会の時に写真など撮らないのに その日は新しいデジカメに替えたばかりだった為 早速
使い勝手を試すと名目で 隊員の一人が玄田の了承を得て持ち込んだのだ。
最新式というだけあって 手振れ補正もあり まず 取り損ないが少なく 画質も格段に良い。
「次俺に試させろ」
「次は俺だ」
ズームや連写など そういったメカ好きの隊員達に引っ張りだこになっていた。
堂上班の面々はそれほどメカには興味が無い者が揃ったようで それを遠巻きに眺めて飲んでいた。
特に堂上は ことさら写るのが苦手で 被写体になりそうになると逃げる始末。
その度に 小牧は上戸が入っていた。
「いいじゃない 撮らせてあげれば。使い方の練習でしかないんだからさー」
時間が経つにつれ皆の興味もソコソコになり 飲み会に集中するようになると 最終的には本当に写真
好きな者がそのデジカメを使っているといった状況になる。
その隊員が特に意識したわけでもないのだろう。
皆を平均に撮っていただけのことだったに違いないのだが・・
いや、もしかしたら 丸分かりの状態でくっつきもせず もどかしいことをしている二人を察してレンズを
向けたのかもしれない。
しかし酔っている隊員は そんな判断をしたのかどうかは 撮っていた本人ですらきっと分かっていない
事だったのだろうと思われる。
分かって撮っていたのだとしたら かなりの確信犯ではないのだろうか。
そして そんな事は 堂上は知らない。
午後の戦闘訓練が終わって事務室に戻ると 皆わいわいと騒いでいる。
堂上は何事かと寄って行くと 先日の飲み会の写真が机の上に山になっていた。
さほど興味も示さず 自分の席へ座った。
「堂上」
そう呼ばれて椅子に座ったまま振り返る。
その声に 写真を見てワイワイ騒いでいた数名の隊員も堂上に目を向ける。
「なんですか」
「ほら よく撮れてたぞ」
と 先輩隊員から写真を渡された。
何気に渡された写真に目をやって 飲みかけのお茶を噴出す。
な・・なんだ これ!いつ撮りやがった! 声に出せない叫びだ。
その様子を 見て皆がまたからかう。
「どうしたんだー?別段ヘンな写真じゃなかろう」
堂上は返答に詰っていると 遅れて事務室に戻ってきた小牧が
「写真?なになに」
面白そうに寄ってきて 覗きこむので 慌てて
「いや 何でもない」
と 隠す。
見せられるか こんなもん!
既に見られてしまったモノは仕方が無いが ここは死守だ。
「何でもないって言われると 気になっちゃうねー」
小牧に見せたら それこそ何を言われるか想像に難くない。
「おい!他にこんな写真あるのか!あったら全部よこせ!」
堂上がそう叫びともうめきとも取れる声で言うと そこに居た皆は どっと笑い出す。
本人は分かってないと思っているのだが もう丸分かりの態度は周知の事だ。
「頼む!あいつが来る前に・・」
その声にまた 皆が大うけし 堂上は真赤になって
「何が可笑しい!!」
と怒鳴るが それも笑いの渦にかき消されてしまう。
他にあと数枚 郁が事務室に戻ってくる前に堂上に押収されたその写真は 知らない人が見たら
どう見ても恋人同士にしか見えない堂上と郁が写っている写真だった。
堂上はビールを煽りながら いつ撮ったんだ・・ と 顔が赤くなる。
一枚は・・・
見つめ合う二人の写真。
自分の顔が 溶けそうなくらい優しい表情だ。
そして郁の顔も・・ この上なく 可愛い表情をしている。
また他の一枚は・・・
いつものように頭にポンと手を乗せて クシャっと撫でている自分と郁の写真。
そしてまた他の・・・
惚れた欲目か 郁がどれもこれも 狂おしいほど可愛い表情をしている。
そして自分・・
もしかして いつもこんな表情をして見ているのか と 恥ずかしくなるほどだ。
恥ずかしくはなるが・・
写真を見ていて 更に顔がほころんでいる自分に気付く。
可愛い・・ 愛おしい・・
ダメだな こりゃ。
相当参ってるな。
頭を掻きながら ビールを煽る。
空に気付くと さらにもう一缶開けることにした。
風呂上りのビールは 本当に旨い。
今日のビールは風呂上りだけじゃないな。
最高のつまみ付きだからか。
そう思いながら 愛しい人に思いを馳せる・・
fin.
素顔の自分