このご時勢 危ないからと 個人で自宅前とか公園で夜に花火が出来なくなっている。
何に巻き込まれるか分からないからだ。
なので日を決めて 図書基地では小さな子供相手に保護者同伴でと名目を打って 警備付きで場所
の提供をしている。
今日は 堂上班がその係りだ。
子供好きの郁は 普段から顔見知りの子供達も数名いるようで 一緒になって それこそ楽しんでいる。
「おい。お前は子供じゃないんだからな。警護を忘れるな」
と 指摘されてしまう程だ。
いつ何時 良化隊が攻めてくるやもしれないとはいえ 子供にせがまれたらその気になってしまうのは
やっぱり郁で それはそれで良い事なのだが。
時たま 郁は分かっているのか・・と 心配をしてしまう 堂上班長だ。
また 楽しそうにしている郁を見ていると 良化隊との抗争の方が非現実に思えてしまう。
確かに最近 良化隊の奇襲攻撃も無く 穏やかな日が過ぎている。
このまま 何も無い日常が過ぎていけばどんなにいいだろう・・と思えるほどだ。
しかし 数日後に出版が予定されている本は 出版前から注目されている物で 良化隊も何やら動き
があるだろうと思われる代物だ。
全く嫌な世の中だと思わずにはいられない。
まだ出版前だから 多分・・きっと・・ 今日は大丈夫だと そう思う。いや、思いたい。
子供達が こんなに楽しそうに花火が出来るように そんな世の中にしたい思う。
PM7時から9時まで。
時間を決めたその花火の催しは あっと言う間に時間が経ってしまう。
今日もきっともう 何も起こらないだろう。
そんな安堵感から 堂上班の面々は 子供達に誘われるがままに 一緒に花火を楽しむ事にした。
俺が全ての責任を持つ。
堂上班 班長の判断だった。
後で 隊長から始末書の一つもあるかもしれないが・・
気にすることは無い。
何よりも 笠原の楽しそうな顔が見たい。
そんな個人的な想いが いつになく強くて。
そもそも笠原は 最初から子供達とワイワイと花火三昧している。
本当にあいつは子供だな そう思うと自然と顔がほころぶ。
「おい 俺も混ぜろ」
そう言いながら そこにあった花火を一つ手にする。
「堂上教官!」
満面の笑みで迎えられて 照れ笑いになる。
こうやって花火をするのもいつ以来だろう。
子供の頃は 親父と妹と 家の近くの公園で花火をしたもんだ。
「教官 これ可愛いですよ」
と 線香花火を渡される。
「大きな打ち上げ花火はここでは出来ないけど こんな小さな線香花火もいいもんですよね」
そう言って 郁は 線香花火を三つまとめて火をつける。
「これを落とさず長引かせるのが いいんですよね!」
一つだと弱々しい線香花火も 三つが重なって一つになると それなりに威力をますが 落ちる速さ
も早くなる。それをいかに落とさず長引かせるか、が楽しみになる。
「俺もそれは よくやったぞ。どれ」
堂上は郁より一本多く四本を手にする。
「あー!教官四本だー。じゃあ 私は五本!」
いつの間にか 子供達そっちのけで 二人で競うように線香花火に興じている。
親子連れの中に そんな二人は自然と溶け込んでいて カップルが花火を楽しんでいるかのようだ。
周りの母親達も そんな二人を微笑ましく見ていた。
小牧に
「班長 そろそろ時間だよ」
と 声を掛けられるまで 堂上は久し振りの花火に夢中になっていた。
「お!もうそんな時間か」
イタズラを見つかった子供のように バツが悪そうにしている堂上が可愛く見えて 郁は クスッと
笑うと
「な・・、お前まで笑うか」
と 暗がりで顔の表情まではよく見えないが どうやら照れているようだ。
「でも 久々で楽しかった」
素直に呟く堂上に 郁も はい と答える。
そんな二人を どう見てもカップルだよな と目を細めて小牧は見ていた。
fin.
線香花火