課業後 いつものように郁は日報を書いていた。

書きながら思い出した事を どうしたものかと思いながら堂上を伺う。
あの後何事も無かったかのようなその背中を見つめる・・・


今日の館内見回りの組み合わせは堂上と郁。
明日は公休で デートの約束になっていたこともあって 心なしか公私混同していた。
と言うのも 久々のデートだ。

どういうわけか 最近いろいろと忙しかったのだ。
たまたま公休日にイベントがぶつかったり どちらかが他の班に借り出されたりとかで 休みが休み
で無くなっていた。

どちらからとも無く 明日の話になって。
郁は 何処に行くかナァ・・とか 思いをめぐらせていた。
今晩からのお泊りでは無いから そういうことはナシだろうし・・
と 一人思って 妙に照れてみたり。

チラッと堂上を見ると
「何だ?顔が赤いぞ」
と言われるので 
「なんでもないですっ!」
そう言って ひゃあ と首をすくめる。


その時 誰かに抱きつかれた と思った。
とっさの事で ビクッと固まってしまう。堂上は気付いていないようだ。彼女が誰かに抱きつかれて
いるのに何で気がつかないのー と思うが声も出ない。

逆に 並んで歩いていた筈の郁が視界から消えたので
「何やってんだ 遊んでんじゃない。早く来い」
と 怒鳴る始末。
「あ!?遊んでなんて無いですよー。それよりもっと大変な事に・・」
「じゃあ それは何だ」
怪訝な声で 眉間にシワが寄っている。

えっ? と思って 抱きついていると思われる人を 後ろを振り返って見てみると 子供!!
小学校の3、4年生くらいと思われる男の子だ。
「ちょ、ちょっとキミ何してるのっ!」
慌てて抱きついている手を解く。

「なんだ つまんないヤツ」
「なっ!」
ツマンナイって どこをどうなるとそう言う発言になるわけ??
子供相手にどうすりゃいいのさ と迷ってなかなか言葉が出てこない。

そうこうしている間に
「バーカ!」
その男の子は あっかんべー をして 来た道を駆けて行った。
「ばかぁ?バカとは何だー。今度したら百叩きだからねー!」
後ろからそう叫ぶと 振り返ってまた あっかんべー をしている。

なんだ!あの子は!

怒りとも 苛立ちとも なんとも言えない思いで堂上に向き直ると 半ば呆れたような表情で
「おまえって ホント 子供に好かれるんだな」
そう言って いつものように手がポンと頭に乗ったかと思うと クシャっと撫でられる。

しばらく頭を撫でられて思考回路が中断していた郁が呟く。
「あれって 好かれてるんでしょうか?」


 ホントにお前は 男心が分からんやつだな・・ しかしだ。あれは困る。
 いくら子供だとはいえ 郁は俺の彼女だ。抱きつくとはいい度胸だ。次は許さん!

郁の頭を撫でて さらに撫で続けているうちに だんだん気持ちは治まらなくなっていく。
 
 さっき あいつは郁に抱きついた。そう こうやって・・。

気がつくと 後ろから郁を抱きしめていた。
「きょ、教官・・」
急に抱きつかれて 郁はどうしていいか分からない
「今・・巡回中ですよ・・」

抱きしめたら 何かの箍が外れた。仕事中なのに押さえが利かない。
それでも理性でどうにか押さえようとする。
どうにか後ろから抱きしめただけで 郁から離れる。
デートも久し振りなら 疲れはてていて夜の逢引も減っていたから 思いは募るばかりだ。

「郁・・今日外泊出しとけ」
「えっ!?」
「何度も言わせるな!返事!」
「は、はい!」
つられて 何故か敬礼をしてしまう。

怒ったような顔で スタスタと前を歩いていく堂上に戸惑う郁。
外泊って・・それって・・ 郁はまだ そういう事に慣れていない。

「きょ、教官!堂上教官!」
呼んでも 振り返らず歩いていく堂上に 郁はついて行くのがやっとだった。
 


日報を書きながら 見つめたその背中は いつもの堂上だった。
急に 外泊出しとけ って あれは本当だったのかな・・ とさえ思えてくる。

「日報出来ました」
そう言いながら堂上の机の上に日報を置くと その腕を掴まれた。
背中はいつもの堂上に見えたのに どうやらそうではなかったようで・・。

「郁 外泊・・ な」
思いつめたような顔で見つめられて 郁は胸がキュンと鳴った。

子供になんて負けない!
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