たまたま公休が一緒になり 二人共出掛ける用事も無く 寮の部屋でゴロゴロしてた。

 暇だね・・ 

 こういう時は読書に限るわ 

と図書館で借りてきた本を柴崎は読んでいる。
郁も借りてきた本を読んではいたが 1日中読んでいるといったのも どうだろう・・とアクビをする。

 ねえ ちょっと散歩でもしようよ。  と誘ったのは 郁。

 仕方ないわね。じゃあ ケーキセットでいいわ。  と答えるのは 柴崎。

 えー 散歩なのに? 
 じゃあ行かないわよ。
 ・・分かったわよー。


二人連れ立って寮の玄関を出ようとした時だった。
玄関ロビーの隅で4、5人の男女が何やら 周りを気にしながらヒソヒソ話をしているのが目に入った。
不思議とこちらも悪い事をしているわけでは無いのに 足音を殺してそろそろと通り過ぎる。
お陰で 二人の気配は気付かれなかったようだった。

郁と柴崎は お互い目と目で 何だろうね・・ と さっさと行きましょう と目配せをする。

その時 ヒソヒソ声の中の一人が 
「それって本当??」
と 素っ頓狂な声をあげた。
その声に押されるように 郁と柴崎は 壁に身を隠す。

 なんで私達が隠れなきゃいけないのよー と また顔を見合わせる。

「バカ。声がでかいわよ」
と別の声。

隠れてしまって その場から出にくくなった二人は 困ったね と苦笑いだ。
さて どうしようか。
今出て行ったら さっきから立ち聞きしてたとしか思われないし。
このまま あの集団が居なくなるまで ここに居るしかない?

どうしようか いい考えが浮かぶまで と しょうがなくその場に座り込むことにした。

 何だか人の話を立ち聞きって いいもんじゃないわね
 そうだね

そう言いながら郁が頭を掻いたその時

「まさか!堂上ニ正が!」「しっ!声でかいって」
と声がする。

 柴崎 今あの人達 堂上教官の事言ったよね!?
 そう聞こえたわ。

柴崎の好奇心がムクムクと持ち上がる。郁はといえば 不安そうな顔になっている。
はっきりとは聞こえないが 壁の反対側だ。
それなりに 聞こえてくる会話を 漏らさないように聞き入る。

「俺見たんだ。その店から出てくるとこ」
「人違いじゃないの?」
「いや あれは絶対堂上だった」

その店って!?なに? 郁の不安はさらに広がる。

「堂上ニ正って笠原ちゃんと付き合ってるんだよね」
「なんで そんな店に?」
「だろ?」

 浮気疑惑ね! と柴崎は郁を見ながら ふふふ と笑う。
 柴崎その笑い方やめてよー 郁の心臓はさっきから バクバクと嫌な音をたてている。

これはもう お散歩どころではなくなった。
もう 我慢も限界!! 

 柴崎 私聞いてくる 

そう言って立ち上がると 柴崎の静止も聞かず
「今の話 ホントなの!」
郁は その話をしている人達に声を掛けた。


「え?何の話がホントだって?」

振り返った その声のする人を見て ぎゃ!と声が出る。
郁の叫び声を聞いて柴崎も顔を出すと そこにはいつもの面々。

「小牧教官なにしてるんですか?」
クックッと笑いながら小牧は 
「手塚からさ これから笠原さんと柴崎さんがお散歩行くから一緒にと誘われたと聞いてね」

柴崎は ああ そう言えばさっき手塚からメールが来たから あんたもどう?って返信入れたっけ?
と思い出す。気にも留めずに忘れてたけど。

 お前忘れるか そういうの・・  手塚は二の句が出ない。

「あの・・それでさっきの話は・・?」
郁はそっちが気になってしょうがない。
「ああ。それね。堂上が笠原さんに付き合って ファンシーな雑貨屋に入ってったって話のことかな?」

「えっっっ!!」
郁はそう叫んで固まる。

郁の顔を見て プハァーと 柴崎が噴出した。
「やだわ 小牧教官って 確信犯ですねー」
「あ、ばれた?」
クックッと上戸が入って止まらない。

「堂上浮気疑惑!笠原さんに追及されて困る堂上が見たくてさー」
「何でそんな事を?」
柴崎は笑いながら聞いている。
「ちょっとね。俺の大事なものを この前壊しそうになったから」
「もしや毬江ちゃんがらみ?」
何も答えないが 笑っている所をみると きっとそうなのだろう。

「でも これって堂上教官っていうより 笠原が痛いだけじゃないですか?」
「そうだね 俺もそんな気が段々してきた」
ごめんね笠原さん と郁に謝りながら
「これって堂上にすれば良かったんだね」
と言う。

柴崎も
「同じような気性だから 笠原が引っ掛かったんだから きっと教官も引っ掛かりますね」
と笑った。


そして 夜。

外出先から帰って来た堂上がまんまと罠に嵌って 小牧の上戸がロビーいっぱいに響いたのだった。

浮気疑惑!?

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