武蔵野劇団存続!?

ここ最近の周りの視線に堂上は戸惑うばかりである。

と言うのも 先日の『武蔵野劇団』の公演がことのほか好評で 中でも堂上がその一番人気だった
らしく、小さい子供からお年寄りまで 館内で声を掛けられる事が増えた。

若い母親達は子供をダシに使っては
「ほら、王子様よ」
とか言いながら話し掛けてくる。

 頼むからその王子様っていうのはやめてくれ。笠原一人でも持て余しているというのに。
 胃がキリキリする。

別の母親は子供そっちのけで
「素敵でした。握手してください」
と、まるで芸能人か何かか!?と 思うほどだ。

中、高校生辺りになると 姿を認めただけでキャーキャー騒いだりしている。

 なんなんだ一体!!
堂上にしてみれば 仕事がやりにくい事この上ない。

お客様の声の箱にもラブレターとみまごうばかりのファンレターが入っている事も少なくは無かった。
それを見るに付け気が重くなる。


「大丈夫?暫くは地下書庫担当にシフト変えてもらった方がいいんじゃない?」
小牧が気にしてくれるのが 申し訳なく思う。
「そうだな。館内警備は外させてくれ。まとわりつかれて仕事にならんからな。まったくどうなってるん
だか・・。芸能人が騒がれてにこにこ愛想良くしている心理が理解できん!」
「あらあらお堅いねえ。いっそのこと手を振ってあげたらどお?喜ばれていいんじゃない?」
「お前なあ・・。他人事だと思って。悪いが俺は芸能人じゃない!」


小牧でなくても同僚からもからかわれ ここのところ全くもって居心地が悪い。 
特殊部隊の事務室はその最たる場所で 玄田を筆頭に顔を見ると「王子様」発言が続くのだ。

 勘弁してくれ。王子様は笠原だけでもう懲り懲りだ・・・

「堂上二正 最近やつれてませんか?」
手塚も心配しているようで声を掛けてくる。
部下にも心配を掛けるようじゃ駄目な上官だな と苦笑いをしながら
「ああ 大丈夫だ。こういうのには慣れてなくてな」
「はあ・・」
「俺もそうだが お前もかなり子供達に懐かれているようだな。大丈夫か?」

自分ばかりではなく、部下の事もちゃんと気に掛けている。
「自分は子供が苦手なので ホトホト困ってるんですが・・何でガキってあんなんですかね・・」
やはり手塚もかなり手こずっているようで それにも苦笑いだ。困ったもんだな。
「でも自分は対象がガキ限定ですから 堂上二正はそれ以上かと思いまして・・」

 ああ それで心配されているわけか。

「まあ心配するな。きっと直ぐに治まるだろう」
そんな楽観的な言葉を言ったが 実際こんなものは直ぐに治まると本当に思っていた。


ところが・・

「みんな聞いてくれ。堂上班の公演以来 問い合わせが殺到しておる」
朝の特殊部隊の事務室だ。
玄田隊長が朝ミーティングの席で 話し始めた。

「今までは班単位持ち回りで図書の日にサービスの一環として行っていたんだが ことのほか堂上
班は受けが良くてな。次が早く見たいと そんな依頼の声がこれだけ溜まった」
玄田はそう言うと 机の上にドサッと葉書や封書、声の箱の中の用紙を乗せた。

 おおー!! 
 すげー!! 

事務室に堂上班以外の隊員の歓声が上がる。
堂上班の四人は無言だった。 もし声が出ていたとしたらそれは

 ひえー!!と言った 叫びだったろうか。
特に堂上は机に突っ伏してしまっていて 身一つ動かさない。
手塚も固まったままだ。
小牧は唖然としていたものの 堂上と手塚を目の前にして可笑しさがこみ上げてくる。
郁も初めはキョトンとしていたが 堂上班では一人 すごいですねーそれ! とはしゃいでいる。

「で どうなるんですか?」
郁は目を輝かせて玄田に質問をする。

「そこでだ。次回公演を予定したいと思うがどうだ?」
玄田の問いかけに特殊部隊の面々は一斉に賛成の意思表示をした。
「よし。決まりだな」

「ちょっと待って下さいっ!!」
悲痛な叫びは堂上だ。
「何も俺たちの班じゃなくてもいいでしょうが!」
「それはダメだな」
「どうしてですかっ!」
「それはだ。俺は全部に目を通したんだが どれもこれも皆 あのメンバーで他の作品が見たい と
あってな。それは無視できんだろう」
そう言って 玄田はガハハと豪快に笑った。

どうやら玄田は自分が演じた快感が忘れられないようだ。
 今度は何の役で脅かしてやるかな と楽しそうだ。
郁は郁でそれに応えて はいそうですね何がいいですかね と同じく楽しそうに笑っている。


 笠原お前、堂上班だろう。班長の意向も汲め! 
堂上はそう思いながら虚ろにに郁を眺める。
そして・・

 今度もお前を抱きしめるようなそんな役だったらやってもいいかな・・

そんなことを考えて ひとり赤くなって俯いてしまう。
そんな堂上を見て小牧はクックッと上戸が入り 見透かされてさらに堂上は机に突っ伏した。


玄田と郁は 作品決めて早速ポスター書かないとですね と張り切っていた。

さてさて 次回公演はどうなるのでしょう。

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