ずっと一緒に 〜伝えたい想い〜

その晩 堂上は小牧を部屋に呼んでいた。
そうでなくとも いつものように飲みたくなれば集まる仲だ。

「今日は何か話しでもあった?」
ビールとツマミを持って部屋に入るなり 小牧は挨拶もそこそこに話しを切り出した。


それは課業後。
訓練服を着替えに行ったロッカールームから事務室へ戻る廊下で
「夜 出来たら早く部屋に来てくれ」
と 堂上はいつになく気難しい顔で そう言ったのだ。
「何?何かあるの?」
と小牧が聞き返しても その時話す と言って 思い詰めたような感じだった。

小牧は 何かあるな と思わせるその態度にただならぬものを感じ 直ぐさま駆けつけた次第だ。


「相談事?」
「ああ」
「それはやっぱり 笠原さんに関係する事だったりするわけだよね」
頷く堂上に そうか・・ と思う。

ここのところ 二人は喧嘩が尾を引いていてかなりの長期戦になっていた。
妙な空気が漂う中 小牧は同じ班員として居心地が悪いのは言うまでもない。

ことの他 付き合う以前より郁には厳しく接するようになっていた堂上が 郁には遠慮がちに接し
ていて 郁はといえば堂上と事務的な事しか話していないようだった。
そういえば堂上の怒鳴り声も最近滅多に聞こえなくなっていた。
小牧としては これは何とかしないと と丁度思っていたところだった。

「今回の喧嘩の事でしょ」
ビールのプルタブを開けながら聞く。

今回の喧嘩とは・・

図書隊の独身寮に暮らす隊員同士で付き合って半年ほど経つと 基地外に二人の部屋を持つ
ようになると言う話しはよく聞くところだ。
そうそう外泊の度にホテルに泊まると金銭面で高くつく。
気兼ねなく恋人同士、二人きりになりたいとは 好きあった同士なら誰でも思う事だ。

そしてそれを笠原さんが言い出したらしいのだが 堂上が言い方を間違えて傷つけてしまった
ということらしい。

「笠原さんとしては辛いだろうね。一緒に居たいって気持ちを拒否られた」
そう言ってチラッと堂上を見ると 堂上は思い詰めた表情で一点を見ていた。

「なあ 小牧」
「ん?」
「俺たち 付き合いだして1年以上経った」
「そうだね」
「俺はもう30過ぎただろ。この歳になって部屋を借りるとか そんなおままごとみたいな事は出
来ない」
「でも 笠原さんはそれがしたい。恋人だったらいつも一緒に居たいって思うのは当たり前だか
らね」
「・・それは俺も同じだ」
「だったら問題ないじゃない」
「・・・。だから考えた」
「何を?」

「そんなおままごとは飛び越して ・・・だったら一緒になる」

えっ!?今なんて?それって・・ 

小牧は意表をつくその言葉に 驚きは隠せない。
小牧も恋人が居る身分で そう言ったことも考えないではないが まだまだ先のことだろうと思っ
ていた。
自分の身近でしかも友人の堂上が そんなことをを考えて居るとは・・・

堂上を見やると 気難しい顔のままだ。
「でもな 今 この状態で言ったらどうなるんだろうか とかな・・」

そうか この友人はプロポーズをして断られやしないかと悩んでいるんだな と分かった。

「それってもしかして・・」
「ああ。結婚したいと思ってる。そしたらずっと一緒に居られるだろ。俺だっていつだって一緒にい
たいさ。気持ちは同じだよ」

いくら俺の前でもそんな台詞が出ちゃうとは かなり参ってるんだね と小牧に言われて しまった
と思ったがどうせ聡い小牧だし、自分達のことを誰よりも知っている奴だから この期に乗じて何で
も話す。
すると小牧が笑顔で
「でも大丈夫だよ。笠原さんはお前と別れる気はまったくないから」
と言う。
別れるとか なんでそんな話し・・少し動揺している堂上に
「聞いたらそう言ってたよ。ただ まだ拗ねていたいだけだって」

まさかこんな事になるとは思わなかったんだ かなり弱気な堂上に 大変だろうけど頑張って と言
うと 疲れたような顔で笑った。

「で どうするの。プロポーズ」
「このタイミングでどうなのか分からないんだ。でもずっとこのままっていうのは・・な」
「だよね。仕事上では こっちも困るからさ」
「おまえらにも迷惑掛けてすまん」

でもここいらが落としどころじゃないかな。そう言うと堂上も ああ と頷いた。

堂上が本当に大事にしてきた恋人だ。小牧も端から見ていても それはよく分かってる。
だから頑張れとエールを送る。
「きっと大丈夫。上手くいくよ!」

「次の公休は外で会う約束をした」
4度の公休を棒に振るほど頑なになっていた郁だったが 郁の方から会いたいと言ってきた。
それはどうやら郁からの和解の兆しのようだ。

「きっとまだ郁はこだわっていると思うから 俺は俺の想いを伝えるつもりだ」



俺だってずっと一緒に居たい。
どんな郁も見ていたい。
誰に気兼ねなく 二人きりになれる場所があったらと思う。
いい時ばっかりじゃない。これからも今回みたいに喧嘩もするだろう。
でも そんな時も傍に居れたら もっと早く仲直りも出来るはずだ。

だから 俺の気持ちを郁に伝えよう。
郁の言ったような部屋を借りる費用を計算してみたら そのくらいの金で指輪を贈ることが可能だ。
そして それを受け取って欲しいと思う。

まずはそこから。
郁はどう受けとめるだろうか。

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