武蔵野劇団 秋の公演決定!

図書館の入口からすぐの広いスペースがロビーになっている。
その一角に「声の箱」が設置されていて 武蔵野第一図書館では それを大切にしていた。
利用者からの声は些細な事でも何かを発信しているのではないか。
そんな思いからだ。


目下 「声の箱」で最近の関心事は 「武蔵野劇団」の次回公演だった。
今や特殊部隊の中で堂上班は「演劇部」と言われる事もあり、入部希望者も居るほどだ。
そんな時は決まって
「何が入部だ!誰が演劇部だ!」
と 堂上の機嫌が悪くなる。

今日もいつに増して不機嫌な堂上が 更に眉間にシワを増やしていた。
原因は玄田だ。
「後で 次回の公演の打ち合わせだ」
ガハハと高笑いで隊長室に呼ばれて 前に話しを聞いていたのだ。
今更の反論は空しく宙を舞い 堂上はなすすべもない。


特殊部隊の事務室。
その玄田は 堂上の膨れっ面には全くお構い無しに 話しを切り出した。
「秋は芸術の秋というのは皆が知っている事だ」

スポーツの秋って言うよな とか 食欲の秋とも言うぞ と 口々に秋を語る。
玄田は 皆を見渡し そうだな色んな秋だ と大きく頷く。

誰かが
「芸術の秋って事は またあれですか!演劇部の!」
と叫んだ。
「演劇部じゃない!お前らぁ 何度言えば・・」
瞬間的にそう言って立ち上がった堂上に一同がドッと沸く。
耳まで赤くなった堂上は多勢に無勢で ヘタッと座り込むとそのまま机に突っ伏した。

そんな堂上を見て手塚も同様に項垂れる。
なんでまたこんな事に・・

堂上班では郁だけが 目をキラキラ輝かせて玄田の次の言葉を待っている。

小牧はそんな班の仲間を傍観者のように眺めて楽しそうに笑っている。

「今回は利用者の方々からの要望が多数あってな。秋の公演と銘打って 一番やって欲しいと
あった演目に こちらで勝手に決めさせて貰った。まあ堂上には伝えておいたがな」
そう言いながら玄田は堂上をチラリと見る。
部隊の皆も堂上に視線を送る。
勿論堂上班の3人も堂上を見た。

皆の視線を感じ 俺は知らん・・ 呟いた堂上は 突っ伏したまま顔を上げようとしない。
「堂上 いい加減観念せい」
玄田はそう言うと 今回の演目を発表した。

   「秋の公演は 『シンデレラ』だ」

一拍の間があってから 事務室はやんやの喝采。大いに盛り上がる。

「堂上!今度は本当に王子様だな!」
の声に堂上は
「笠原の王子様発言を俺に被せるな!笠原 お前も何とか言え!」
と必至だ。


手塚慧のお陰で郁は王子様の正体を知ってしまっていた。
そして自分の気持ちも。
皆の冷やかしに抵抗している堂上を見ると 片思いなんだな・・ と思い知る。
お前も何とか言えって言われても しおれた心で 何も言えずにいるだけだ。

そんな郁の心の揺れに気付く事が出来ずに堂上は 知っている奴が居る事も分かっているが
「俺は王子様とは関係ない!」
と言う始末だ。

気持ちは分からんでもないがな そう呟いた玄田に傍らに居た小牧も 笠原さんも可哀想だし
 堂上は大人げないですね と相づちを打つ。
これじゃ収拾つかんなあ 玄田はそう言うと

「よーし!いいな!キャストはこれからだ。堂上班以外でも劇に出たいというヤツは歓迎するぞ。
今回は人手がいるからな。以上だ」
と その場を締めた。



夜 堂上の部屋にいつものように小牧が来ていた。
「今日のアレはまずかったんじゃない?笠原さん哀しそうな顔していたよ」
小牧は二人の気持ちを知っている。
両思いだと分かっているが しかし余計な手出しは一切しない。
でも 流石に可哀想だったなと思う。

「王子様につい反応してしまうんだ。俺にどうしろって言うんだ・・」
堂上はそう言うなり ビールを一気に煽る。

ああ、そうか。
堂上も自分の言ったことで落ちてたのか。

「これじゃ俺はアイツのこと 何とも思ってないと思われても仕方ない・・班長として最悪だ・・」
「えっ!?そっち?」
どうも素直じゃないね 班長としてじゃなくて男としてでしょ そう言うと 
「分かってる」
堂上は残ったビールを一気に空けた。

次回秋の公演は前途多難・・。

                                            fin.

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