【17】

温泉に行こう!!

「私も混ぜてもらっちゃって悪いわね」
折口にしては はにかみながらそう言うので
「おい、お前幾つだ。気色悪いぞ」
と 玄田が突っ込む。
「あら。女は幾つになっても可愛いものよ。熟女の可愛さも分からないなんて アンタもよっぽどおじ
さんね」
フンと鼻で笑うと 
「熟女ときたか」
ガハハハと玄田の豪快な笑いが響いた。

「ごめんなさいね。こんなにガサツで。あなた方も毎日大変ね」
折口にはいつものことらしく 全く気にするでも無い様子に 流石に付き合いの長さを感じる。

「いいえ。隊長あっての特殊部隊ですから」
そつなく堂上が軽く会釈をしながら苦笑いで返す。
堂上君が居てくれるからあの人も好き勝手出来ているのよ 折口は玄田に聞こえないように小声で
そう言うと ありがとね と付け加えた。

「そこ!いつまでもくだらん事をウダウダ言っとらんで さっさと乗れ。置いて行くぞ」
「はぁ〜い。今行くわよ〜」

玄田の大声にも臆すること無い折口の軽やかさに 折口さんが居るからこそ隊長も好き勝手やりた
い放題出来るんだろうなと 堂上は思った。
お互いがお互いを理解して分かり合っているからこそ 何でも言える良い関係なんだと。

俺たちはどうなんだ・・

少しのことですぐに気持ちが揺らいでしまう。
想いは募るのに なかなか相手に伝わらない。もどかしさばかり感じて 挙げ句には逆の行動に出
たりする。最悪なのは 不安にさせて しまいにゃ泣かせてしまう。

考えれば考えるほど ドツボだな・・ と思う。
だから今回の旅で少しでもお互いが分かり合えたら・・ と思う。 
俺のことをもっと知って欲しいし 郁の全てを知りたい。彼女の全部を俺の全てで包みたい。



手塚の運転で一行は山梨は石和温泉へ向かう。
近いからゆっくり出来ると言うことの他に 葡萄狩りや 唯一郁が飲めるワインの美味しいのが揃っ
ている。と言うのが決め手だった。

車も玄田の参加で 隊にあるワゴン車を調達できた。私用に使っていいのかと思うが ここは全員
玄田に従っておくことにする。


基地を出て中央自動車道に乗ればそう時間は掛からずに到着する距離だ。
若干一名の 富士急ハイランドに寄りたい という意見は無視され 一行はワイン工場へと行くこと
になった。

工場見学のあと 色んなワインの試飲があり売店でそれらが買えるようになっている。
「これは甘過ぎだな。これは辛口だ。これは・・」
と豪快に飲み比べている玄田に その辺で止めときなさい と折口が止めに入っている。
「バカ言うな。こっちは客だ。いろいろ吟味してだな 最後はちゃんと購入するんだから文句は無い
だろう」
「そう言って そんなに飲んだらダメでしょう」

聞く耳を持たない玄田に意見をするのは いつもなら堂上の役目になるが 今日は折口が居てくれ
て助かった と思いながら 堂上はその光景を見ていた。

小牧にも
「折口さんが居てくれるから 今日は笠原さんだけ見ていられてよかったね」
と 心の内を見透かされたように言われて 少し狼狽えるが
「そんな事はない」
あえて不機嫌な顔をして そう言ったら 逆に上戸が入ったようでクックッと笑われてしまった。

「何が可笑しい!」
今度は本当に不機嫌な顔になってしまって
「素直じゃないんだから」
そう言われて グッと詰まってしまう。

「俺のことはいいから お前は毬江ちゃんの相手をしてろ」
「はいはい。班長もちゃんと笠原さん見てなきゃ。笠原さん、さっきから結構いろいろと飲んでいる
みたいだよ」
「な!小牧!お前なー」

いいように遊ばれていると思いながら郁を見ると 確かにさっき見ていたときよりも顔が赤い。
目もトロリとしているような気もする。

「郁。その辺で飲むのは止めとけ」
「そうですか?まだそんなに飲んでませんけど・・」
「そんなに飲んで無ければいいんだ。で、どれくらい飲んだ?」
「うーん・・。これで六ヶ所くらいかな?」

・・・!!
いくら小さいコップだとはいえ 玄田ならともかく・・だ。

「堂上教官。あの三番目の樽のが一番甘くて美味しかったですよ。これはちょっと辛いです」
そう言って にっこりと笑う笑顔が 酔いが回ってきているせいか妙に色っぽい。

本当に俺はいろんな意味でコイツに弱いんだ。
そんな目で見つめられたら・・ 
まだまだ旅は始まったばかり。先が案じられるな・・と堂上は頭を掻いた。

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