【19】
温泉に行こう!!
部屋毎にカード式のキーを受け取ると 部屋へ案内される。
フロントで聞いたところによると 眺めのいい高層階のツインルームらしい。
って言う事は・・?
玄田隊長と折口さん、堂上二正と笠原、小牧二正と毬江ちゃん・・となると 俺は誰とだ?
そう思いながら手塚は傍らの柴崎を見る。
フロント係りの話を聞きながら 本当は最初っから分かっていた事を改めて確認することになり 自然
と眉間にしわが寄る。
こいつはそこを分かっているんだろうか。
俺と一緒でいいのか? そもそも男として見ていない・・とか。 それはちょっと情けないぞ・・
「何やってんのよ。皆行ったわよ」
柴崎だけ見ていてうっかりしていた。見れば皆は荷物を預けて既に歩き出している。
「ああ、悪い」
「あんた 私に見とれてたでしょ」
とんでもないジャブが入り よろけそうになったが踏みとどまって
「バーカ。そんなんじゃねーよ。それより いいのか?」
「何が?」
あっけらかんとした返事に ちょっと躊躇しながら
「同室・・俺とだろ」
と言うと
「ボーっとしてるから何かと思えば。なーんだそんな事悩んでたんだ」
うふふっと可愛らしく笑う柴崎に 手塚はドキッとする。こいつ俺を試してないか?
「あんただったら平気よ。同志だと思ってるから。でしょ?」
いとも簡単に返されて 手塚は そうだな と呟いた。
キスもした仲なのに そこから一歩も進まないでいる俺たち。
ここで進展でもあるかとかすかな期待も そんな事をチラッとでも思った自分が恥ずかしいほどだ。
きっと柴崎は俺という人間を安心できるものと捉えているのだろう。
その期待は 今は崩さないようにと そう思った。
荷物をドアボーイに預けて郁を支えながら歩き出す。
まだちょっと拗ねている郁は それでも堂上に身を預けて離れない。
多分自分でも分からないくらい ワインが程よく効いているのだろう。
晩御飯の案内を聞いてから 各部屋へと分かれた。
「郁・・」
二人っきりになって 部屋へ入るなり堂上は郁を抱きしめる。
「堂上教官・・?」
「さっきは悪かった。早くこうしたくて でも皆が居たからあんな態度をとってしまった」
そう言って 口付ける。
「郁 何度も言うが 俺がお前を嫌いになんかならない。だから安心しろ」
抱きしめる手に力が入る。
「本当に?信じていい?」
「ああ。俺にはお前しかいない。お前じゃなきゃ駄目なんだ」
長いキスの後 さっきまで拗ねていた郁は いつの間にか涙を溜めた顔が笑顔になっていた。
「わあー 教官。眺めいいですよ。凄いホテルですねー。この部屋だってすっごく素敵!高そう!」
多少ワインの酔いが残っているものの 正気を取り戻した郁は 今度ははしゃぎまくっている。
さっきまでの照れ隠しの為もあったのだけれど。
堂上もそれが分かっているから 郁がはしゃぐままにさせておく。
そしてその姿を ただただ微笑ましく見つめていた。
「まるで子供みたいだな」
愛おしい者を見る目で堂上は見つめていた。
その視線に気づいて いや もうとっくに気づいてはいたのだけれど 郁は恥ずかしそうに堂上の
傍らに座った。
「さっき何だかいつもの教官じゃなかったみたいでした」
普通に言ったつもりが 少しかすれた声になる。
郁の肩に腕を回し引き寄せると 軽くキスを一つ落として
「そうか?」
と言うと コクンと郁は頷いて こんな事言っても怒らないでくださいね と肩をすぼめながら
「だって何だかプロポーズみたいだったから・・」
と顔を赤らめる。
な・・そうだったか?
つられて堂上も顔が赤くなり 肩に置いた手に力が篭る。
そう聞こえたなら そう思ってもらっても構わない。
いずれそうなってもいいと思っているから。
そして時期が来たら その時はちゃんとプロポーズをしたい。
「郁・・何度も言うぞ。俺はお前を嫌いになんかならない。ずっとだ」
「ほら またそんな事言うから・・」
エヘッと 舌を出してはにかむ郁に
「いずれ 時期が来たらな」
とだけ 伝えておく。
えっ?と 驚く郁に お前から言い出したんだろ と笑いながら頭をコツンとする。
でも それは何だかそう遠い事じゃないような気がしていた堂上だった。
「郁。まずはそうだな その前に その教官呼びを止めてくれ」
それが出来てからかなあ と茶化すと ぷうっと膨れる郁がまた可愛かった。