【20】 最終話

温泉に行こう!!

豪華なホテルに商店街の会長も さぞや頑張ったのだろうと思うほどの部屋も 休日前だったらそう
もいかなかったのかもしれない。
ツインといえども広く最上階に近いその部屋に カップルで4部屋も割り当ててもらったのだ。

リッチな気分を満喫していると 郁の携帯が鳴った。
「お取り込みのところ邪魔して悪いけど 今大丈夫かしら?」
柴崎からだ。
「何言ってんのよ。全然大丈夫。何もお取り込みもしてないし」
「なーんだ。じゃあ これからそっち行くけど いいかしら?」
堂上に 柴崎来るって と言うと ああ と答えるので
「待ってるねー」
と電話を切る。
切るなり コンコンとノックの音がする。
どうやらドアの前から掛けてきたようだ。

「どっから電話してたのよ!ホントに取り込み中だったらどうしたのよ!」
慌ててドアを開けると うふふっと笑って柴崎は
「あら?取り込み中って何かしら?」
「・・うっ。しーばーさーきー」

柴崎の後ろを見ると 何と全員がそこに揃っている。
「ど、どうしたの?何?」
郁が驚いていると
「悪いねー。ちゃんと夜中にならないように皆部屋に戻るから。ごめんね」
と 小牧がそう悪いとは思ってない口調で言いながら毬江をリードしながら部屋に入ってくる。

「おう!まだいたすには早いだろ。ちょっと皆でゲームだ」
と 玄田も折口を伴って入って来た。

驚いたのは堂上も一緒で 直ぐには言葉が出てこない。
いたす って隊長!何をいきなり・・
口をパクパクさせているのを見て クックッと小牧の上戸が入った。

「堂上面白れー」
そんな小牧を無視して
「で ゲームやるって なんでここでなんですか」
と玄田に尋ねる。ちょっと拗ねたような堂上に 小牧が更に受けている。
「小牧笑い過ぎだ!」

「まあいいじゃねぇか 堅い事言うな。飲み物もツマミも持参だ」

どんちゃん騒ぎの後 流石にこれ以上は他の宿泊客から苦情がくるといけないのでお開きにする。
「明日の朝食は7時だぞ。寝過ごすなよ」
「それはお互い様です」
ガハハはと豪快な笑いを残し 玄田達は部屋を後にした。

皆で多少は部屋を片付けてくれたが それでもあちこち散らかっているのを見ながら 
「疲れちゃったね」
と郁はあくびをする。
眠たそうな郁を見ながら そうだな じゃあもう寝るか と言うと そうする と返事が返ってきた。

今日のところは仕方がないか・・
おやすみのキスをして頭をいつものようにクシャっと撫でると郁のほうから堂上にしがみ付いてきた。
「そっちのベッドで一緒に寝ていいですか」
と。
駄目な訳は何処にもない。

部屋の電気を消して今日一日の思いを込めて深いキスをする。
そして後は二人の世界へと・・


 
翌日 7時きっかりに朝食の会場になっているレストランに行くと
「おい!ちゃんと寝れたか。目に下にクマ出来てるぞ」
玄田にそう言って茶化される。
「お気遣い無く願います」
そう言いながら バイキングになっている朝食を選びにその場を離れる。

まったくあのおっさんは!とふてる堂上を見て 郁もクスッと笑う。
何笑ってる お前も言われたと一緒なんだぞ と言うと郁は そうでしたね と肩をすぼめた。

その日は予約を入れておいた くだもの園に葡萄狩りに出掛けた。
バーベキューも出来るというので1日そこで過ごしホテルに戻る。

夜はまた
「今からいいかしら」
の柴崎の電話から始まり 1日目と同様な展開が堂上の部屋で繰り広げられた。
初日以上にどっと疲れて 堂上と郁は苦笑いになる。

「郁 今日はゆっくり寝ようか」
「はい。でも一緒がいいです」
「ああ 分かってる」

そう言いながら上掛けをめくるとそこにはキチンと包装された包みが手紙と共にあった。

『お疲れ様でした!今日はこれでも飲んで頑張って!明日は出発まで起きてこなくても起こしに
行かないから大丈夫だよ』

包みの中を見ると まむしドリンクやらタウリン3000の栄養ドリンクやらが入っている。
そう言えば小牧が 堂上はどっちのベッドで寝るの って聞いてたなと思い出す。

あいつら!何考えてるんだ。新婚初夜のカップルじゃねえんだぞ!

包みを持ったままボーゼンとしている堂上が可笑しくて 郁は笑い出した。
「あほう!何が可笑しい。うのみにして朝食に顔出さなかったら何言われるか分かったもんじゃね
え」
「でもそれ飲んでみたいかも。普通の栄養ドリンクは飲んだことあるけど まむしドリンクって飲ん
だこと無いから」
「俺だって無い」
「本当に効くのかなあ」

包みの中を見れば全部2本ずつ入っている。
「試しに飲んでみましょ」
手にとってにっこり笑う郁にほだされて・・
「じゃあ これは試しにということだ。但し朝食にはキッチリ起きるぞ」

そうして夜は更けていく。
ドリンクが効いたのか効かなかったのか・・



最終日の朝。
朝食のバイキング会場にはちゃんと堂上と郁の姿があった。
しかしどう見ても寝不足そうな二人で。
どっちにしてもからかわれることになった。

帰りはゆっくり寝かせてあげよう。
そんな暗黙の了解のもと 帰路につく。
とはいっても 基地まではそんなに遠くはないのだけれど。

帰りの車の中で爆睡の二人は とても幸せな寝顔をしている。
何夢見てるのかしらね。 
柴崎はその寝顔を見ながら なんだか自分も幸せな気持ちになっていた。

また皆でこんな旅ができたらいいね と。

                                             fin.

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