考える・・・
何を だ。

自分の他には誰も居ない病室の 白い天井を眺めて呟く。
何をどう考えたら 答えが出るのか。
小牧の言うように このまま見合いなんかしてみろ 大変な事になる。
それは分かった。

とにかく 見合いはしない 断る。
こんりんざい そんな話は聞くつもりはないと 伯母に断言する。
好きな奴くらい 結婚相手くらい 自分で見つける。

想い人は・・既に心の中に居る。


俺は嫌われていて もう話すらしてもらえないと思っていたのに・・
あいつは 俺の傍から離れないという。
俺を越えるまで 俺の傍にいるという。

少しは 可能性があるのだろうか。
上官と部下として・・今はそれだけだとしても。

出来るなら 誰にも渡したくない。
ずっと俺の傍に居て欲しい。
そう思ってもいいのだろうか・・ 

まだ20代の若いうちなら もっと積極的にもなれただろうが・・
どうしても慎重になってしまう自分がいる。
好きだけでは・・ それだけでは 前に進めない。
こんな俺を 受け入れてくれる時が来るのだろうか・・
そもそも 俺はこの気持ちを伝えることが出来るだろうか・・

・・分からない。

今は どう考えても考えが何処にもたどり着かない。
でも・・

自分のこの気持ちだけは 揺るがない。
笠原の事を愛おしく想う この気持ちだけは。



少し前に看護師が点滴を換えにやってきていた。
どうやら今日は本当に動けないらしい。
天井を見ていた堂上は いつのまにかまた眠りに落ちていた。


ふと 誰かの気配がして目が覚めた。
静か過ぎる病室で かなりの時間寝ていたようだ。
薬が効いているせいなのか 寝れないでいた分を取り戻すかのように。

寝ぼけ眼の虚ろな目で動く気配を確認する。
「か、笠原・・」
何でまた お前が来る・・。
嬉しい反面 驚きがそれを優先する。

「えへへ また来ちゃいました。どうも私 教官に怒鳴られてないと落ち着かないみたいなんです」
と言って笑う。
「何だか 今日は変な感じで・・だから来ちゃいました」
そう言いながら ベッドの脇の椅子に腰を下ろす。

さっきまで ずっと笠原の事を考えていたんだ。
そんな笑顔で見られたら 俺は・・・
今にも 腕を引いて抱き寄せたい そんな衝動に駆られる。

黙ったままの堂上をどう思っているのか
「小牧教官から 堂上教官が私を堂上班に戻してくれるって聞いたから それのお礼もあったし・・」
と言うと
「だからと言って やっぱり来たら迷惑ですよね・・」
すいません帰ります と頭を下げる。
「早く良くなって戻って来て下さいね」
そう言って立ち上がる郁の腕を 堂上は無意識に掴んでいた。

えっ?
あっ!

振り返った郁と とっさの自分の行動に慌てて言葉が出ない堂上と。
「堂上教官・・?」
堂上はこめかみを押さえるように頭に手をやると
「笠原 とにかく座れ」
と それだけを言う。 それに従う郁。

暫らくの沈黙の後
「すまん。頭が朦朧としているのか寝ぼけているのか そんな状況だから ヘンな事を言っているな
と思ったら聞き捨ててくれ」
そう 前置きし 話し始める。

今回の一連のこと・・
母方の伯母で 堂上すら手に負えないその人は 事ある毎に見合いを勧めてくる。
あまりのしつこさと 断りきれなかった自分への苛立ち それをたまたまそこに居た笠原にあたって
しまったこと。
自分は上官として 堂上班の班長として 笠原の事は大切だという事。
出来るなら ずっと傍に置きたいと思っていたが 手放すのは笠原のためを思っての事だった。

それらを言葉を選びながら 丁寧に説明していった。
郁は俯いて じっとそれを聞いている。


笠原はどう思って聞いているのだろう・・不安と切なさが過ぎる。
今改めて ずっと傍に居て欲しいと思う。
笠原には傍に置きたいと言ったが 傍に居て欲しい それが本音だ。
いっそここで 好きだ と言ってしまおうか。
そんな思いに駆られながら 郁を見つめる。
しかし 今ここで告白したら 完璧に振られそうだな・・
自分にしっかりしろ と激を飛ばす。

「笠原・・」
顔を上げた郁と目が合う。
必然的に見つめあう形になる。

「堂上教官・・」
郁のその言葉も 堂上にはいつになく艶かしく聞こえる。
いかん・・熱がまた出てきたか。
無理やり視線を逸らし 
「俺は直ぐ退院するからな。しっかり励んどけよ」
怒鳴るように言った。

郁は 何だかそれが嬉しいようで にっこりと微笑みながら
「はい!教官!」
と いつものように敬礼してみせてくれた。



その時病室のドアの前では 小牧と手塚が どうしたもんだろう と、入るに入れないでいた。
「小牧ニ正 これはどういう状況なんでしょうか・・?」
手塚にしてみたら ややこしくて訳が分からないらしい。
それが可笑しくて 小牧はクックッと上戸が入る。
「手塚 おまえの思ったとおりだと思うよ」
そう言って小牧は
「でも 困ったモンだよね。俺達が中に入り込めないくらいの世界作っときながら お互い分かっち
ゃいないんだから」


きっとしばらくは このまま過ぎていくのだろう・・
堂上班の幸せな日々・・

いつの日か もっと幸せな日々がくることになるのだけれど・・ね。


                                              fin.

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【6】

捻じれた気持ち