「・・なにこれー!!」
机の上に朝配られた1枚のプリント。
見ていた郁が すっとんきょうな声を上げて叫ぶ。

ちょうどその時 事務室に入ってきた堂上に
「なに朝から騒いでいる」
と怒鳴られた郁は
「だってぇー これ見て下さい!!」
と 見ていた紙を堂上に渡す。
そして 皆のとこにもあります と各自の机に置かれたプリントを指差す。

堂上は 机の上の紙を目で確認し 郁から手渡された紙を見る。

ご大層にも  『通達』  と書かれたそれは 仰々しく野外訓練の日程が書かれている。

「野外訓練の通達だが・・ これがどうした?」
とタイトルだけ見て 怪訝そうに郁を見る。
「教官 中身ですよ! 中ちゃんと読みました!?」
いつもの野外訓練のだろう・・ と言いながら 目をやると みるみる堂上の顔が引きつっていく。

なっ・・ なんだこれは・・!

小牧と手塚は 堂上の様子を見て 慌てて机の上の紙を各自手にし 同じように読み出した。
「特別問題は無いと思いますが」 と言う手塚。
クックッと上戸の入る小牧。
何が可笑しいっ! と堂上は小牧を一瞥すると 小牧は
「これってあの『目安箱』の意見だよね きっと。隊長が考えるとは思えないもんね」
と言う。

図書特殊部隊の事務室には 

  隊の親睦を図る・言いたい事を言って根に持たない・愚痴でも何でも言え 

という玄田の案で『目安箱』なるものが置かれている。
置かれた最初の頃は それこそ相談だの悩み事が多かった。
それがいつの間にか 飲み会の開催願い とかどうでもいいようなネタばかりになっている。


『通達』と書かれたそれは・・ 
5日間の野外訓練の行程と内容が書かれており 特に何も問題があるようには思えない いつもの内容だった。
が、場所がいつもの奥多摩では無い と直ぐに見てとれた。

”−実施場所− 九十九里浜○○海岸”


「手塚 問題ありでしょ!」
郁が先の手塚の発言に食いつくと
「山が海になっただけだろ」
と 全く気にかける素振りもない。
「問題大有り!!なんで海なのよー。で あんたちゃんと全部読んだの!?」
郁の頭は沸騰寸前 顔も真赤になっている。
「読んだが 何かあるのか?」
「あー あんた相手にムキになるんじゃなかったっ!」
そうか コイツは朴念仁だった。


最後の方に米印付きで添えられた言葉・・
  ※是非彼女連れで参加されたし 彼女居ない者も夏の思い出を作ろう!


これ訓練じゃないよね。絶対遊びだよね。
この持ち物の所 ワザワザ太字で水着って やらしー!
訓練中は 隊員以外は海辺で自由時間・・って何だよー。
信じらんない!!

「ぶわっはっは・・笠原さん 可笑しー 」
小牧に笑われ えっ!?と振り返ると
「お前はなんでいつも ダダ漏れなんだ・・まったく・・」
と 堂上が呆れたように呟いている。
「だってぇ・・」
郁は 口を尖らせてから 二人の教官に懇願するように見ながら
「あの・・ 不参加だとダメでしょうか」
と切り出した。
「ダメだ。全員参加と書かれている」
と 堂上。
「何?笠原さん 陸上は得意だけど 海はダメなの?泳げないとか?」
と 小牧。

ううっ! やっぱダメか・・ ダメなのか・・

「いえ・・泳げますけど・・ その・・」
どうも歯切れの悪い郁に堂上は眉間にシワを寄せながら
「煮えきらん奴だな。言いたいことがあったらハッキリと言え!」
と怒鳴る。
その怒鳴り声の勢いに押され

「あのっ!水着になる自信がありませんっ!」

堂上は郁を見たまま固まっている。
一瞬シーンとなった後 その場は かつてない最大級の発作がきた小牧の大爆笑が響いた。

夏の野外訓練

【1】

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