「笠原・・これは 一応訓練だぞ」

堂上に そう言われはしたが 『野外訓練』のそれは 何度読み返しても訓練のプリントには見えず、
どう見ても 『海水浴リクリエーションへのお誘い』 としか思えない。

海水浴 海水浴 海水浴・・
もう何年行って無かったっけ。

戦闘職種で 背の高いだけの自分。
特に胸。
胸が無いというのは 服だったらどうにかできるのに 水着はどうしても誤魔化しが効かない。
女同士 友達と一緒でも その膨らみはやっぱり気になって 引け目を感じてしまう。

うーん・・・
絶対これは 私の事は はなから頭に無い企画だよね。
男所帯の特殊部隊ならではの・・

寮の自室で 例の紙を眺めながら一人でブツブツ言っていると 柴崎が帰ってきた。

「聞いたわよ。海水浴行くんだって?」
「柴崎!!やっぱ そう思うよね!」
「なんのことよ?」
「だってさ 訓練だって言うんだよ。絶対海水浴のお誘いなのに」
と その お誘い の紙を見せる。

「あら 誰が参加してもいいのね。じゃ 私も行ってもいいって事よね」
最後まで読んで 柴崎はにっこりと答える。
郁は うん と頷いてから ・・水着 と独り言。
「あーら笠原。水着の心配してんの?」
「いや・・その・・ あの・・」
しどろもどろになって だって胸無いし としょげる。


ホントにこの子ときたら・・ これだけのプロポーションでこの脚持ってて 何言うかな。
全く自分の事が分かってないのよね。

いくら柴崎がそう言ってみても 胸が無い の一点張り。
胸が無いだけで 千年の恋も冷めちゃうんだからー と一人で騒いでいる。

ははーん そこね。
想い人が自分の胸を見てどう思うかって事が 気になるワケか。
堂上教官なら 胸が有ろうが無かろうが 関係ないと思うんだけどね。

「笠原 水着買いに行こう。見立ててあげる」
少しでも 郁の気持ちが凪いでくれるといいんだけど。
最高の笑顔で 郁を見上げてみる。
「柴崎!!なんか企んでない?笑いが不気味!!」
「私も折角だから新しいのが欲しいし。よし!休みの調節しなくっちゃ。笠原 私も参加で出しといて」
「わあー 益々・・」
「なぁに?」
「ううん・・何も・・」
「笠原は私に任せて 大船に乗ったつもりでいればいいのよ」
郁は ほっほっほと笑う友人がやっぱり不気味だと思った。

何だか 柴崎が張り切りだしちゃった・・
どうしよう・・
郁は更に気が重くなっていった。

夏の野外訓練

【2】

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