【5】

温泉に行こう!!

当たれば「温泉旅館ペア宿泊券」が くじを引かないのに「優待券」に変わっている。
寮の自室でその券を繁々と眺めながら 
「使っちゃっていいのかなあ・・」
と郁は恐縮至極だ。

「優待券」の宿泊先は券の裏面に記載のある温泉旅館&リゾートホテルから 好きに選べるようで
宿泊人数も その券1枚で ペアどころか何人でもいいと かなりアバウトだ。
優待の金額は満額の90%、70%、50%と三種類あって 郁たちが貰った券はどうやら90%off
らしい。

「これなら ほとんどご招待と変わらないわね」
と 柴崎は目を細めて見ている。

宿泊日は記載されている五回の中から選ぶことになっている。

どの日に行こうか・・?

「笠原。堂上班に回覧してみる?あんただって教官と行きたいでしょ」
「・・いいの?」
「だってこれ ペア宿泊券じゃないし。部屋だって商店街の会長つつけばどうにもなるでしょ」
まあ そんなことをあの男性も言っていたような・・。ご希望は聞きますとか・・。
この柴崎を敵に回したくないってきっと思ったんだろうと察しがつく。

「明日その券持って行って 聞いてみるね」
そう言いながら郁は とりあえず堂上にメールを入れておく。

 明日楽しみに見せてもらう 

短い返事が返ってきた。
自然と顔がほころぶ。 楽しみに・・ だって。

堂上と付き合うようになって外泊も数えるほどに経験してはいるが 旅行のようなラフなお出掛けと
なるとまだ一緒には無いので 心なしかウキウキしてくる。
折角行くなら 普段見れないトコとか・・ 珍しいものがあるトコとか・・
うーん。。。

結局一緒なら何処でもいいかなー とか思ってしまう。

なにより 一緒に居られる事が嬉しい。

そんな事を考えながらいつの間にか眠りについていた。
そのせいか 夢を見ていたようで・・



一緒に行った筈の柴崎達の姿はどこにも見え無い。でも 声は聞こえている。
柴崎の声も 手塚の声も 小牧教官の声も・・ 皆の声は聞こえている。
でも皆の姿は見えなくて。

広い花畑のまん中で よく分からないけど 堂上教官と二人きりで座っていた。

 郁・・ その声のする方を見ると 堂上は優しく微笑んで郁を見ている。
堂上教官 と言おうとするが声は出なくて 唇が塞がれた。
皆が居るのに・・ 声がしているのに・・ そう思うのに 自分からも堂上を求めている。

 堂上教官・・ そう言って手を伸ばしたら いきなり誰かに掴まれて・・!?


ひゃあー・・何事・・
飛び起きると
「笠原 何寝ぼけてるの! ほら 早く起きないと遅れるわよ」
柴崎が 呆れたように郁を見ていた。
目覚まし時計を手に取って見てみると どうやら止めていたらしい。

さっき 手を伸ばしたのは目覚まし時計を止める為だったのか?? そう思いながら柴崎を見ると
「いい夢見てたでしょ。顔がニヤついてるわよ」
それこそニヤニヤ笑っている。

何の夢だったのかな・・
でも ホントふわっとしていて いい夢だったような・・
覚えているのは さっきのあの場面だけ。

「笠原 朝から妄想中悪いけど あんた顔に出るから気をつけたほうがいいわよ」
と言われて 郁は キャア と首をすくめる。

「柴崎 お願いだから 余計な事は言いっこなしだからね」
真赤になりながらそう懇願すると
「夢の中でも堂上教官とキスしてたって事 黙ってればいいのね」
しれっと言われてしまった。


  柴崎 頼むから 堂上教官には内密に・・

  ん? じゃあ外ランチ デザート付で よろしくね

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