【14】
温泉に行こう!!
柴崎は『優待券』を手にした経緯を簡単に説明する。
郁以外の男三人は驚いたように聞き入っていた。
「お前絶対 敵にしたくないヤツだな」
手塚がポツリと呟く。
あら 今頃気付いたの? と返されて やっぱりこいつにはかなわない と眉を細めて横顔を見る。
「すごいねー 流石だよ 柴崎さん。やるなあ」
感心しているのは小牧だ。でも あの商店街のくじ引きの話しは前からマユツバだったからね と。
「そのうち誰かに叩かれると思ってたけど 柴崎さんがやっちゃうとはね」
にこにこと嬉しそうに語る。
「で 実際引いたくじは何が当たったの?」
小牧はいたって楽しそうだ。
「そ、それが・・」
歯切れの悪い郁に代わって
「七回ぜーんぶ ボックスティッシュだったんですよ」
と 柴崎が言うと 郁は はい、そうなんです・・ と頭を掻きながら俯いた。
買い物の荷物もあったのに軽いけどかさばって大変なのに柴崎ったら一個も持ってくれなくて・・
あら アタシが持ついわれはないもの
と どうでもいいような言い争いを再燃し始める。
ややあって 思い出したかのように
「でも!話しはティッシュじゃないですから!もう 余計なこと聞かないで下さい!」
一応反論してみせるが 小牧は上戸が入りながら 悪い悪いティッシュも大事だもんね と更に笑っ
ている。
「だから小牧教官 優待券ですってば!」
郁は膨れながら小牧に券を突き出した。
上戸が入ってクックッと笑いながらそれを受け取り
「ああこれね。喧嘩の原因の券って」
と サクッと言い放つ。
うっ・・ 郁と堂上は二人して何も言い返せない。
「へぇー、いろんな場所から選べるんだね」
小牧は固まった二人にはお構いなしで とても楽しそうに優待券とそのご案内の紙を見ながら 何処
に行きたい? と 隣に座っている手塚に話しを振った。
「自分は何処でもいいです。それより俺も行っていいんですか」
「さあ。俺も呼ばれたクチだからよく分かんないけど」
案内のチラシを見ながら小牧は柴崎の方を見る。
「折角のお安いチケット貰ったんですもの 行く行かないは別として お誘いはしないと何だか居心地
が悪くって」
柴崎はそう言ってにっこりと笑ってみせた。
「だってさ」
小牧はそう言って手塚を見ると はあ・・分かりました と難しい顔をして手塚は頷いた。
ここで俺は行かないとか言うと後々までいろいろと言われそうだ
「柴崎さん達は行きたいところあるの?」
「行きたいところと言っても そもそも遠くは行けないですよね」
仕事柄いつ呼び出しが掛かってもいいように そう遠くには行けないことは柴崎も分かっている。
でも都内に宿泊というのは 折角の優待券がなんだかもったいない気もする。
「隊長にお伺いたてて 何処に行くかはそれから決めてもいいよね」
今日は役に立たないと言われても仕方のない堂上に 隊長への報告よろしくね と頼む。
堂上は実際 今日の自分の不甲斐なさを自覚していて ああ分かった と言って頭を掻く。
「隊長には俺から報告を入れておく。とりあえず候補地を三ヶ所くらい挙げてくれないか」
ご案内のチラシを回し読み 各々行きたい場所を思い描いていた。