【15】
温泉に行こう!!
行き先の希望はアッサリと三ヶ所決まった。
というのも 何処に行きたいと言う訳ではなくて 日頃の喧噪から離れて何処かでゆっくりしたい
そんな気持ちだけだったので 関東近郊のそこらで落ち着いた。
「よし。明日これを持って隊長に掛け合ってみる。後は行く日だが、ここにある五回の出発日が決め
られているから シフトの調整の都合上、明日の話し合いで決まるが異論はないな。柴崎は決まっ
てからこちらから業務部に掛け合うことになる」
最後は堂上が締めて一件落着となった。
小牧に いつもの堂上に戻ったね と いなされて 当たり前だ と言うものの顔は不機嫌そうだ。
たまに昔の向こう見ずで感情に流される危なっかしい自分が出てくる。
今回もそんな感じな俺だ。
どうも郁を前にすると 彼女を愛おしく想う余りに感情が先走る。
そうなると厄介だ。自分に自分で歯止めが利かなくなる。
郁には大人の顔を見せているつもりだが、この歳になって いったい幾つの学生さんか。
俺もまだまだ青いな・・ と思う。
前の俺がそうしてきたように 訓練に更に励もうと握った拳に力が入った。
「決めることも決まったことだし 後は好きに飲んだり食ったりしてくれ」
堂上がそう言うと すかさず柴崎が
「今日は堂上教官の奢りでしたっけ?」
にっこりと 上品な笑顔でそう言った。
「だよね!そうじゃなくっちゃ。今日は色々と大変だったもんな」
小牧もそれに相づちを打つ。
「そうですか。ゴチになります」
と言って 手塚は申し訳なさそうに頭を下げた。
「ああそうだよ。好きにしてくれ。但しそう高いものは無しだぞ。給料日前だからな」
不機嫌な顔はさらに不機嫌になって しかし最後は一応釘を刺しておくのは忘れない。
しかし メニューを見ながら あれこれと注文をしている部下と友人を見ていると 良い仲間に恵ま
れたんだと つくづく思う。
こんな仲間だからこそ 自分と郁はこうして居られるんだと思わずにはいられない。
隣に座っている郁も さっきまであんなに支えていないと崩れそうで弱っていたのに いつの間に
か 元気ないつもの郁になっている。
郁は 俺だけじゃない。皆に支えられているんだ と実感する。
そして それは俺にも言えることだ。仲間に支えられて 今の俺がここにいる。
そんな俺が一人の女を愛して いつも彼女の支えになりたいと 幸せにしたいと思っている。
なのに不安にさせてばかりいる。泣かせてばかりいる。
郁を泣かせない強い男にならなければ 不安にさせないように大きな愛で受け止めて包んであげ
なければと 恋人を熱い目で見つめた。
そして こんなにも郁の事が好きになっている自分に驚きは隠せない。
こんなにも深い愛で相手に向き合ったことが今までにあっただろうか。
郁の一挙手一投足に目がいって こんなにも気になる。
今だって・・・・・おい!?
「お前 いくらなんでも それは頼み過ぎじゃないのか?」
さっき頼んだ料理が運ばれてくるのに 郁は まだあれこれとメニューから選んでいる。
「だってぇー」
「だっても無いだろうが。まさか一人で食うつもりじゃ無いだろうな?」
「うっ・・」
おい 図星か!?
そりゃお前 千年の恋も冷めるぞ。
「いいじゃない。俺たちも一緒につまませてもらうからさ」
笠原さん見てると飽きないよねー 次は何をしてくれるんだろうって。
そう言いながら 小牧はクックッと上戸が入ったようだった。
「そうですよー。みんなも食べてくれるから大丈夫ですってば」
何だか慌てている郁を見て柴崎が
「そっか。笠原 朝ご飯抜きだったし 昼ご飯もあんまりだったもんね」
ああ ここでも誰かがちゃんと見ていてくれているんだと 堂上は思った。
俺たちは こうやって仲間に支えられて生きている。
「そうだとしてもだ。今度は食い過ぎてお腹が痛いと言っても聞かないからな」
「それは大丈夫です!」
元気よく応える郁に
「バカ野郎!少しは人の財布も気にしろ!」
軽く頭をコツンとすると エヘッ と肩をすぼめてこっちを見た。