第一班が野外訓練から帰って来た。
率いて行ったのは 緒方副隊長。
すこぶる機嫌がいいようだ。

天候の良さもあり 訓練もそれ以外も 滞りなく無事に終わったようだった。

流石に訓練はきつかったと話題も出たが それ以上にバカンス的要素が多い今回の行事は ことさら
これから行く他の班の興味を引いた。
家族連れは家族連れで 何処がどうだったと 情報交換しているし
独身組は独身組で 何処が穴場スポットだとか 気が付けばそこらじゅうで盛り上がっている。

「やっぱり訓練ってより 海水浴のお誘いだったみたいだよね」
その日図書館内の警備のバディになっている手塚に ウキウキしながら郁は語りかけた。
手塚は怪訝そうに
「おまえなぁ・・ 一応訓練が建前なんだからな。分かってるだろうな」
と 返してくる。
郁は つまんいヤツ! と横目で見ながら
「はい、はい」
と 分かったような返事をしておく。

「あんたもさー 誰か一緒に行く人居ないの?」
の問いにも
「特にいない」
と そっけない言葉だ。
こいつは何が楽しいんだろう と 思わず見上げてしまう。

じゃあこれはどうか。
「柴崎の水着でも楽しみにしてみれば?」
と 聞いてみる。
あれ?さっきまでの落ち着いた態度とは少し変わった? 何だか 険しい顔だ。
「馬鹿。あいつの水着なんか見たときにゃ 拝観料 だの言われそうだ。何が楽しくて拝んで観なきゃならないんだ」
出来たら避けたいもんだ と言うから 面白くなってくる。
「あんたさー 柴崎に何か弱みでも握られてる?」
ちょっとつつくと
「いろいろあるんだよ!」
いつもと逆転の雰囲気に 気分がいい。

あらあら 慌ててるし。ちょっとからかい過ぎたかなー 
そうニヤニヤしながら館内警備を続けていると 前を歩いていた手塚が急に止まった。
予想していなかった郁は そのまま背後から手塚に追突。
「ちょっとぉ!急に止まらないでよ!」
と ぶつかった顔を抑えながら文句を言うと シッ と言われ 何事かと思っていると
「おい。あそこ」
と 指を指している。

見ても良く分からなくて どうしたの と 声を低くして訊ねる。
「分からないが 何かが動いてないか?」
なおも指差す方を目を凝らして見ると 書庫の間を動く影がある。
その素早い動きに目が付いていかなくて 手塚と郁と 二人で顔を見合わせて首を振る。

すると 館内から
「キャー!」
とか
「うわぁ!」
とか 悲鳴やら 驚きの声があがり 館内もざわついてきた。
「おい!早く捕まえてくれ!!何やってるんだ!!」
怒鳴り声も聞こえる。
館内は騒然となった。



浮かれ過ぎてた。 そう思っても後の祭りだ。
もっと気を引き締めていなきゃいけなかったのに・・

「何した?」
堂上と小牧が別の警備から加わる。
「何か 館内に紛れ込んだようです」
と 手塚が答える。
紛れ込んだ 何か は動きを止めたようで 非難した利用者で誰も居なくなった館内がヒッソリと音を閉ざしている。

しばらくの沈黙が続く。

その時・・ 郁達の前方で何かが動く気配がした。

「あ、あそこ!」
郁の指差した方を見ると 大きなサルが一匹こっちへ向ってくるところだった。

ふと郁は思い出していた。
そう言えば お昼のニュースで この近くで飼っていたサルが檻を破って逃げたとか・・
えっ!? このサルって そのサル!?

「きょ、教官・・ あれ ニュースで言ってたのですよね・・」
振り向くと 堂上が難しい顔で頷いた。
「警察に連絡だ」




スイマセン  汗
何だか とんでもない展開ですが 今しばらくお付き合いくださいませ・・

【7】

夏の野外訓練


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